※みんな学校同じ ※風丸さんがサッカー部じゃない。陸上部 ※なんでも許せる方はどうぞ 背中合わせ 意識し始めたらできなくなった。 例えば、いつもみたいに話しかけること。あれ、俺前までどんな感じに話してたっけ。いつも通り、を心掛けても忘れてしまったのだから仕方がない。これじゃ記憶喪失。その言葉が今の自分に妙に似合ってる気がして、思わず笑みがこぼれた。 話、だけではない。見ることだってそう。 風丸をいつだって視界にいれておきたくて、いつも目で追ってしまう。でも彼がこっちを向いたときには目をそらしてしまって、自分で自分を殴りたくなる。ああもう、これじゃストーカーみたいじゃないか。感謝すべき点は、学年が違うことだろうか。 「何百面相してんだよ、リュウジ」 ぶんぶん、と振っていた頭を止め、目を開けてみれば、目の前にいたのは大夢だった。いかんいかん、人の目の前で変なことをしてしまった。 「大夢、いつからそこにいたの?」 「んー、お前がニヤニヤし始めたあたり?」 そんな前からいたというのか。その事実に愕然。 「そもそも、お前が呼んだんだろ。相談があるとか言って」 それを聞いて、ふと思い出した。そういえば呼んだっけ。どうやら種をまいたのは自分らしい。 とりあえず、どもりながら、断片的に今までのことを話した。見たい、話したい、でもできない。そんなもどかしい気持ちを。もちろん相手はふせた。 「…末期だな」 一言、そう返ってきた。う、と言葉が詰まって、それから出てくることはなかった。 日常生活がそうなのだから、もちろん部活中もそうなわけで。救いは部活が違うことだろうか。 「緑川、最近調子悪くないか?」 「えっ?そ、そうかな」 部活中、ヒロトに呼び止められた。こいつ、痛いところをつく。 「具合が悪いなら、帰ってもいいんだよ?」 「そんなんじゃないから!大丈夫!」 わざと気丈に振る舞って、頭の中の雑念を振り払う。よし、今はサッカーに集中。両頬をパァン、と叩き、ボールに向かって走っていった。 |