気になる 文字にするならば、イライラ、である。 イナズマジャパンに合流して、また鬼道たちとサッカーができる。それはいい。それはいいのだが、こういうシチュエーションには必ずいる、邪魔な奴。そいつは鬼道にひっついて回って、鬼道もそいつをかまってばっかりで。 真・帝国学園の一件があったから、そいつ――不動から目が離せない。いつ、何をするかわからないから。 だからといって、ここまで一緒にいるのを見ると、アジア予選の間に何があったのか疑ってしまう。 もし何かあったとしても、信じないのがオチだと自分で納得する。どんだけだ、俺。 「おい佐久間!そっち行ったぞ!」 「え?うわっ」 慌てて自分のところに来たパスを受けた。 そうだった、今は練習中。一番ぼーっとしてはいけないときにしてしまった。あいつが悪い。そう思って、不動を睨む。あいつは表情も変えず、ただただプレーしているだけ。そこらへんもなんかムカつく。 「佐久間、何かあったのか?」 練習後のストレッチ中、鬼道が心配そうに俺に話しかける。 「調子が悪いように見えたが…」 「大丈夫だ。ありがとう、鬼道」 それならいいんだが…とストレッチに戻る。鬼道が不動と仲がよさそうなのにイライラしてました、なんて言えるわけがない。まるで嫉妬してる女子みたいじゃないか。もし言ったとしても、それはない、と言われるのは目に見えている。 「佐久間クン、調子悪いね」 先ほどと同じ質問をされて、顔を上げてみると、そこにいたのは調子の悪い元凶。 「…別に」 とりあえず適当に答えておいて、ストレッチを続ける。 「もしかして、俺と鬼道クンが仲よさそうなのが気に入らなかった?」 「なっ…」 「図星だな」 思わず手を止めてしまった。目の前にいる不動はニヤリと笑う。 「いやー、佐久間クンが気にするとはねー」 ケラケラと笑うそいつに絶句。 こいつ何だ。心の中とか読めるのか。 「手ェ、止まってるけど?」 指摘され気がつき、再開。おそらく、止まったのを見てわかったのだろう。なんたる不覚。 「でも、鬼道クンより気になる奴いるんだけどね」 「…ふーん」 残念ながら俺は全く気にならない。全身の筋肉が程よくほぐれ、ちょうどよくなったくらいにストレッチをやめる。 「佐久間クン」 「なんだよ」 「いや、佐久間クン」 …俺がどうした。 「気づかなかった?鬼道クンの件は、佐久間クンに気にしてもらいたかったからなんだけど?」 そこまで言うと、じゃーな、とその場を去って行く。 問題発言を残して。 そして俺自身、この発言により心臓が早鐘を打ち始めた、なんて死んでも言えるわけがない。 |