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「あー、あーっ、んんッ」



喉からは風邪特有のがらがらの嗄れた声が。そういえば、少しざらついて痛い気もする。
昨日の夜は特に冷え込んだので、寝冷えしたのかもしれない。
でも喉が少し可笑しいだけで他は別段変わりないので、休むほどでもないだろう。
さっさと着替えて階段を降りると、まだ朝もはやいせいか、カウンターにはファイが一人いるだけ。



「あー、おはよう名前ちゃんー」

「おはよう、ファイ…んっ、んー」

「あれ、名前ちゃん風邪?」

「喉が少し痛いだけだから大丈夫。そういえばファイだけ?」

「そうなんだよーぅ。わんこコンビは鬼児退治だし、さくらちゃんたちはまだ寝てるし、寂しかったんだよー」

「ふふ、ごめんね?」



はい、とカウンターに出されたのは、バニラアイスの乗ったフレンチトーストとアップルティー。
普段なら名前が食べ終わるまで待っているはずのファイだが、今日は朝食を置くとすぐに別の作業に取りかかってしまった。

相変わらずファイの料理は絶品だと、舌鼓を打つ。
ペロリとたいらげてしまい、開店の準備に取りかかろうとすると、ファイに呼び止められる。



「なぁに?」

「名前ちゃんにはコレも」



少し大きめのマグカップが、ホワホワと温かい湯気と甘い匂いを発している。



「…ホットミルク?」

「かりんとハチミツ入りだよー。それ飲んだら、あったかくして今日は寝てて」

「え、でも…」

「いーからっ、はやく風邪治して…、ね?」

「……はい」



諦めて、言われた通りにホットミルクを啜る。
喉からゆっくりと流れていくそれは、温かくて、甘くて、優しくて、骨の髄まで染み渡っていく感覚は、似ている。
名前の大好きなあの人と、大好きな、



「キス…」

「え?」

「ファイ、キスして……?」

「…姫の仰せのままに」



ファイはそっと、優しく、奪うように口付けた。





(大好き)(大好き)(愛してる)




Title by:meg
2008.10.07
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