反逆アイロニィの涙 | ナノ
黒い。
服も黒、空も黒、私の心も黒。涙でさえ、アイラインが滲んで黒く染まった。そんな黒に覆われた空間に、真っ白な花と青白い彼の顔は眩しくて、私は外に飛び出した。外は、私にたたき付けるように大粒の雨が降っている。冷たいかどうかなんて、もう分からない。心なんてもう冷え切ってしまった。それでも、涙だけは止め処なく溢れてくる。
「どうして…?」
どうして。どうして彼だったのか。いつも私に笑いかけてくれた彼は、今はもう綺麗な顔で眠ったまま。決して動く事はない。もう二度と、私に微笑んでくれることはない。
「ねぇ……」
立っているのも億劫で、私は膝から崩れ落ちるように座り込んだ。涙で視界が歪む。
絶望。
大袈裟かもしれない。でも私には大袈裟でもなんでもなくて。望みは絶えた。
「私を置いていかないでよ…。ねぇ……どうして…っ」
私はどうしたらいいんだろう。昨日も今日も、これからも。ずっと二人で居られると思っていた。ずっと二人で笑い合えると思っていた。それが、こんなにも容易く壊れるなんて。誰が予想出来ただろう。否、予想出来たとしても、どうすることも出来なかったに違いない。それほどに、それは突然過ぎた。
「……陽魚」
頭の奥が、ズキンと痛んだ。
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