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堕ちた光、至高の闇


 バルベロは死んでいる。それでも、バルベロの記憶を持った魂は生きている。その意味を、シュウは理解していた。だから、セフィリス・サラヴァンの魂を持ったリーファの状態を予想するのも、然程難しいことではないはずだった。しかし、自らの気が動転していた所為だろう。気付かなかったシュウ自身も悪い、とは思っていたが。
「何かあった時は言えと言っただろう。馬鹿野郎」
 先程ベッドの中に運んでやって、漸く毛布の中が暖まったのか、気持ち良さそうに眠る女魔術師を見た。
 牢獄の一件があったのに関わらず、学習能力がありそうで、実は学習能力が無いという、一番太刀が悪いパターンの人間だった相方の魔術師。魔術が発動する直前に、鳩尾に一発入れて、意識は何処かに行ってしまっているのだが、とりあえず、何か言わないと気が済まない。
 しかし、それと同時に、気持ちは落ち着いていた。リーファには、まだ思うことがあるが、それは追々、話し合う必要がある、とシュウは考えていた。リーファも、シュウと同じように、死人であるはずのセフィリス・サラヴァンという男に、未だ翻弄される側の人間なのだから。
 バルベロ・インファインの魂を持っていることで、シュウは、色々と苦労してきたのだが、その苦労の中に、魂の意志というものがある。それは、バルベロの想いそのものである。どれだけ、シュウがセフィリス・サラヴァンを恨もうとも、バルベロは彼を愛していた。だから、シュウにとっての憎悪の対象であったとしても、絵画に描かれた覇王、書物の覇王の記述などには、つい目がいってしまうのだ。シュウ自身は、見たくも無いのに関わらず。
 それと同じことだ。
 セフィリス・サラヴァンは、バルベロを恨んでいる。バルベロを苦しめることに悦びを感じている。それは、あの平和主義のリーファに、絶対に使わないような魔術を使わせる程のものだ。シュウは、セフィリス・サラヴァンが、それだけバルベロを恨んでいることを、誰よりも知っていた。
 シュウは溜息を吐いた。リーファの首は、未だに赤い。シュウは、とりあえず、何か冷たいもの持って来てやろう、と思い、すぐ傍にあった布切れを持って、手洗い場に向かった。




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