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シャーナの理由


 一言で言うと、空。動作を加えると、落下。そんな尋常ではない状況に、ビアンカはあった。しかし、ビアンカは平然としていた。
 強い風が吹く。
「ザマーミロ」
 聞き慣れた少女の声が響き、ふわりと体は浮上する。鮮やかな青の鱗と、小さな体。真っ赤に染まった自分の翼を触れさせるのは、躊躇いを覚えるような、美しい姿。
 神と天使から嫌われた生き物、ドラゴン。
「意味分かって使っています?」
 そう尋ねてみると、ふいっと首が動いた。それがおかしくて、にやりと笑ってしまう。
「使い場所は合っていますよ。ですが、泣きっ面で言う台詞ではないです」
 大きな青の眼は、煌いていた。それは、空の赤に負けぬ、鮮やかな青。
「何で助けてくれたの?」
 意地らしい声だった。
「何ででしょうね」
 自らの翼を汚し、その身を堕としてまで、守るべき者だったとは思えない。
 くすりと笑って地を見やる。
「あなたは、全て見通していた。そうでしょう、リーファ」
 白亜の宮殿も、空の赤に染まっていた。
「あなたなら、あの覇王を、セフィリス・サラヴァンを、変えられます」
 ミューシアにも聞こえない程の小さな声は、血塗れの空に消えていった。



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