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シャーナの理由


 扉がゆっくりと開いた。シュウは、気配だけで何者かが予想できたので、目だけをそちらに向けた。
「どうした? ヴァルシア。守って頂かなくても良いのか?」
 そう言って、シュウは、体を横たえたまま、刀を手に取り、丸腰の王太子の方を見た。
「無断で来ましたから」
 王太子は、穏やかな微笑を浮かべたまま、さらりと言った。諦めているわけではない。シュウが自分を殺さない保障があるかのような微笑だった。
 シュウは、そんな弟の態度に、僅かに表情を歪めた。
「俺は手前を恨んでいる。分かっているだろ」
 カチャリ、と冷たい音を立てて、銀を見せつけるようにして光らせる。
「私は恨まれて当然のことをしました」
 シュウの目から、目を離すことなく、王太子は、はっきりとそう言った。懺悔まの情など入っていない。しかし、淡々としているわけでも、開き直っているわけでもない、そんな微妙な声。
 リーファのいない時を、敢えて選び、その上、騎士一人連れてこなかった王太子。
「分かっていて来たのならば」
 王太子は賢い。騎士を何人連れてきたところで、シュウを前にしては意味が無いことを知っているし、初対面の反応から、リーファの得体の知れなさも感じ取っているのだろう。
 しかし、どちらにしろ、ある意味救いようの無い人間ではある。
「手前の馬鹿な度胸、買ってやる」
 一人抜け出すのに、この弟がどんな手を使ったのか。想像を膨らませながら、シュウはにやりと笑った。




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