群青の花嫁の後(リーファ視点)

外伝


 私は誰よりも魔術が上手く使える。
 生まれつき、魔力が大きく、誰よりも扱い方に長けていた。
 私は、ビアンカやミューシアよりも、魔術師としては、上を行く。
 でも、彼らの方が強いだろう。たとえ、魔術だけで勝負をしたとしても、私は彼らには勝てない。
 私は、あくまでも魔術師として、彼らの上をいくだけだ。魔術の実力では負ける。
 それだけではない。


 あれから、シュウが一度だけ、あの時のことについて尋ねてきた。
「手前は、俺よりも強いのか?」
 いつになく真剣な顔だった。
「まさか、そんなことは無いと思う」
 私はさらりと言った。
「魔術師は剣士には勝てないんだ。何があっても」
 シュウは目を細めた。
「私は、自分の力が制御できないわけでもないけど、与えられた力と勝ち取った力では、その質が違う」
 与えられた力を不満に思っているわけではない。むしろ、誇りだ。
「つまり、私は魔術師には勝てるけど、他には負ける。よって、君のほうが強い」
「まぁ、俺に勝てた奴もいねぇ」
 分かっているのか分かっていないのか分からないシュウの相槌。
「私に勝てた人は山ほどいる。まぁ、そういうことだね」
 ゆっくりと息を吐くと、シュウは呆れ顔で言った。
「手前は、難しいこと考えるなぁ」
 理解しているのかは分からない。でも、理解できないはずは無いだろう。シュウは馬鹿だが怜悧だ。
「自分でもそう思う。だから、疲れた。葡萄ジュース取って」
「自分で取りやがれ」
 哲学的な朝食も、たまには良い。
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