二十年前
外伝
小さな窓からは、壮大な夜が垣間見える。小さな少年は、暗い部屋の中から、僅かな夜を眺めていた。
漆黒の瞳に、漆黒の髪。体に比べて大きめのローブもやっぱり漆黒だ。青白い顔は無表情だが、ただ、その目だけが、忌々しげな光を放っていた。
そして、その目は、皺一つ無い黒のローブに向けられていた。
母と名乗る女が似合うと言った黒色。黒以外の服を着たことが無いのだから、当たり前だ。少年は、心の中で嘲笑った。
自由になった暁には、絶対に黒は着ない。そう心に誓ったのは、いつだっただろうか。
白い肌が綺麗だね、と言われた時には、その肌をめちゃくちゃにした。掻き毟って掻き毟って、食事の時に貰ったナイフも使って、血塗れにしてやった。
やつらが愛するものを全てを壊してやりたい。愛する物を全て壊してやった後、ゆっくりと壊してやろう。漆黒に囚われていた少年が、そう思い始めたのはいつだっただろうか。