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天使の宴


 豪奢な白亜の宮殿に、それを囲むように建てられた家々、美しい花咲き乱れる庭園。森を抜けた丘の上にあったのは、神聖レンシス王国王都。
 逃げ切ったのだ。背後を見れば、焼け爛れた森があった。もう、天使はいない。
 隣を見れば、シュウが息を切らせていた。シュウの美しかった衣は、ボロボロになっていた。
 そして、薄明かりの中、橙色の肌に浮かび上がっていたのは、「R」の文字だった。
「レンシス……」
 身分を示す刻印は、普通、腕にある。しかし、王家の者だけは、その刻印を肩に刻む。
 リーファの呟きを、シュウはせせら笑っているかのようだった。リーファの顔を見ようともしない。ただ、その顔は、目の前に聳える白亜の王宮の方を向いていた。
「まさか、あんたがね……」
 レンシス。王族。神から最も愛され、人を導くと言われる人々。体を触れることすら忌まれるシャーナの者にとっては、天の、そのまた上にいるような人々。
 相変わらず何かを見据えるその笑みは、まるで、どう思うかを尋ねているかのようだった。
「冗談じゃない」
 リーファは、少なくともシュウよりは、人々を正しい方向に導け、倫理的、道徳的にも、上にある自信があった。何と滑稽なことか。リーファは男の顔を見た。
 隣の男はただ笑っているだけだった。憎悪の篭った笑顔を、白亜の宮殿に向けているだけだった。



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