5

天使の宴


 シュウは、珍しく文句一つ言わなかった。いつものように、わいわいと歩く。全く進展の無いミューシアとビアンカ。溜息がちにそれを見るリーファ、先頭を歩くシュウ。
 しかし、それは長くは続かなかった。
 夜明けにしては、眩しい光が辺りを包んだ。ビアンカが、まさか、と呟く。リーファは、天を仰いだ。
 美しい。光を纏った天使たちが、天から降りてくる。シュウの舌打ちが響いた。その次の瞬間、周囲が眩い光に包まれる。天術だ。
「ヘスティー・アレア(戦いの炎)」
「二ュクシア・ジャスティス(裁きの闇夜)」
「ニュクシア・アイギス(闇の盾)」
 ミューシア、ビアンカ、リーファの魔術が放たれる。上空で爆発音が響き、熱風が吹き荒れる。リーファは思った。天術に対抗したところで、生き残れない。
「ビアンカ、ミュウ、二手に分かれるよ。魔術が一点に集中したら、全てが飲み込まれる。二人は空から逃げて」
 魔術は、自然の原則を捻じ曲げる。使いすぎれば、全てが無に還る。どこからそんな知識を仕入れたのか、リーファは分からなかったが、今はどうでも良い。
「逃げるぞ」
 シュウの声。手を繋ぐなんてものではない。ぐわっと肩を掴まれて、そのまま、男の速さで走らせられる。背後には爆音が響き、降り注ぐ天術の欠片が、体に当たる。
 森の中をただひたすらに駆けていく。この地獄絵図のような森を、どれだけ走っただろうか。リーファは、ほとんど意識が無かった。
 しかし、その森の奥に、一筋の光が見えた。リーファは息を呑んだ。



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