4

牢獄


 何か面白い話しろよ、とシュウに言われたリーファは、特にする話も無かったので、リクエストのあった獄中生活での武勇伝を話して聞かせた。
「多分、それ宮廷魔術師筆頭の、フィーリィ・クィルナ・クラリアだ」
 ケラケラと笑う男は、心底愉快そうだった。
「部下の信用も低い感じだったよ」
 リーファは、さらりとそう言った。暫くすると、リーファのネタも切れ、シュウの笑いも収まった。
「シュウも何か喋ってよ。昔のことを話したくないのなら、何か物語でいいからさ。私が知っているのは無しね」
 シュウは、あからさまに嫌そうな顔をしたが、リーファの顔をまじまじと見てから、溜息を吐いた。
「かぐや姫って話知ってるか?」
 姫というからには、御姫様が出てくるのだろう。リーファの中で、姫が出てくるか否かは、好き嫌いと何ら関わり合いはない。しかし、シュウが語るのなら別だ。
「知らない」
 リーファは、にやりと笑った。シュウは、さらに嫌そうな顔をした。
 しかし、シュウは、低い声で語り始めた。お世辞にも上手いとは言い難かったが、リーファは大筋だけはしっかりと掴んだ。
「へぇー、月に帰っちゃったんだ」
 リーファの第一番の感想は、それだった。
「無責任だとは思わねーか?」
 面倒臭そうに、シュウが尋ねた。
「惚れた方が悪いと思うけど」
 リーファがさらりとそう言うと、シュウが非難の混じった目を向けた。
 シュウのその反応を見て、意外と心はメルヘンなのか、とリーファは思ったが、黙っていた。
「お姫様だろう。月に王子様がいるかもしれないし、本当に残りたいのなら、残れば良いと思うけどな」
 そう言ったリーファは、自分こそある意味メルヘンで、普通とは言いがたい感想を言っていることに気付いていない。
「世の中、手前みたいな女ばかりじゃねーよ」
 リーファは、自分が普通の人間だとは思っていなかったが、取り分け変人であるとも思っていない。
「今度は、アーサー王伝説みたいなのが聞きたいね」
 話し疲れたのか、心なしぐったりとしているシュウに、リーファはさらりと言った。
「長えよ。既に、物語じゃねーよ。手前は子どもか?」
「シュウに言われたら、お終いだ」
 リーファは、律儀に返答するシュウに、くすりと笑って答えた。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -