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魔術師は、濁音を響かせて這い上がる


 森には無事に辿り着いた。
 風貌は怪しい男だったが、案内はきちんとしてくれたのだ。
 リーファは、切り株に腰掛ける男の姿をまじまじと見た。異国の遊び人らしき服装を纏い、刀を一本持っている。
「お姉さんは、どうして、そんなにボロボロの姿で走っていたのかい?」
 森の中へ入り込み、一息吐いているところで、ニヤっと笑った男は、そう尋ねてきた。
「お姉さんって呼ぶのはやめて。私はリーファ。おそらく、年もあなたとそれほど変わらない。まだ二十三だよ」
「俺より一つ下か」
 男は、細い目をすっと開き、驚いたように言う。
「牢屋から脱獄してきたところだから、物も食ってないんだ」
 溜息を吐くと、男は数回頷いた。
「近くに泉がある。そこで汚れを落とせば良いぜ」
「ありがとう。あなたの名前は?」
 笑顔で礼を言い、そう尋ねると、男はにやりと笑った。
「俺の名前? シュウだ」
 切れ長の目を細め、口元を歪める笑顔。危険な男だ。リーファは直感的にそう感じた。



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