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群青の花嫁


 包丁も入手したので、村のすぐ近くの茂みで一夜を明かすことになった。宿取らないのは、宿で平穏に過ごせる面々ではないからである。
 村唯一の宿を全壊など、笑い事ではない。
 リーファは、ミューシアを寝かすと、再び村に入った。ふらりとシュウが出て行ったのが、気がかりだったからだ。町なら兎も角、こんな小さな村で、女遊びをしてくるとは思えない。
 では、一体、彼は何をしているのか。
 剣士の後をつけるのは無謀だ。さらに、相手はシュウだ。斬られても文句は言えない。
 リーファは、シュウが見えなくなってから村に入ることにした。
 立ち上がり、村へ行こうとした矢先、風と共に涼やかな声が流れてきた。
「どこへ行かれるんですか?」
 ビアンカである。ミューシアから離れたところで寝ているが、流石にリーファの動きには気付いたようだった。
「村。シュウが怪しいから」
 短く言うと、息を吐く音と共に、そうですか、というあっさりとした相槌が聞こえた。
「よく、ここまで持ちましたね」
 リーファはくすりと笑う。
 今まで、シュウに殺されてきた魔術師よりも、リーファが優れていることは多くある。しかし、生き残るのに重要だったことは一つだ。
「流されることも、逆らうことも、どちらも大切なんだ」
 リーファは、亜麻色の髪の美しい天使の方を見た。
「シュウという人間の前では、それを上手く使い分けることが重要なんだよね」
 ビアンカの上品な笑い声が、森のざわめきに混じって聞こえた。



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