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群青の花嫁


 包丁を手に入れようと、一行は村の中に入った。唯でさえ目立つのだが、こんな辺境の村では、目立つという次元を遥かに超越していた。しかし、包丁は手に入れなければいけない。
 賑やかな音楽が聞こえる村を、一行はのんびりと歩いていた。そんな時だった。
「あれ何?」
 ミューシアが人の集まりを指差した。リーファが、ミューシアの指の先に目を向けると、そこには、純白のドレスに身を包んだ女性と、正装をした男性、そして、それを取り囲む人々がいた。
「結婚式だと思う」
 二人の表情は遠くて窺えないものの、皆、酒を飲みながら、騒いでいるところからして、楽しい結婚式ではあるのだろう。 リーファの言葉に、ミューシアは無邪気な笑顔を浮かべた。
「へぇー、ミュウもいつか結婚したい」
 やっぱり女の子とは違うな、とリーファは思い、青い髪を撫でてやった。しかし、それだけで事は終わらない。
「無理でしょうね。世界がひっくり返っても」
 ビアンカが、淡々とした声で、さらりと言った。素直じゃないな、とリーファは思ったが、何も言わなかった。
「そんなことないもん。極悪天使は、絶対にできないと思うけどっ」
「ミュウ、ビアンカ、村の中だから静かにね」
 こんな村の中で、しかも結婚式がすぐ近くで執り行われているのに関わらず、魔術合戦などされたもんなら堪らない。リーファは、二人をさり気なく引き離した。
 そして、ふと隣を見ると、シュウが結婚式を見ていた。しかし、その表情は、いつもより険しい。
「シュウ、どうした?」
「騒いでる奴は、壊したくならねぇか」
 シュウは、そう言って、取り繕ったかのような人の悪い笑みを浮かべた。リーファは目を細めたが、それ以上は何も訊かなかった。



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