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行方不明の御妃様


 ウェルティアという人物は、王家の者であるから、亜麻色の髪に鳶色の瞳である可能性が高いらしい。リーファは、そのような色をもつ人物を知っていたが、すぐに脳内で却下した。奴は天使だ。
 とりあえず、町を捜し歩きたいと言うので、髪まですっぽり覆ってしまうような民族衣装を買わせ、リーファはレナーサと共に市場を回った。
 勿論、楽しむことも忘れない。
 よくよく考えてみれば、初めての女友達である。
 色違いの髪飾りを買ったり、珍しい果物を買ったり、リーファは、初めての友人との買い物を楽しんだ。 二人で選んだのは、紅い髪留めと、青い髪留め。リーファが紅で、レナーサが青だ。二人で髪に付けて、笑いあった。
 そんなことをしていたのもあり、リーファは、当初の目的をすかりと忘れていた。だから、レナーサの、いらっしゃりませんね、という言葉の意味を、一瞬考える羽目になった。
 そして、街外れに差し掛かったとき、レナーサがゆらりと笑った。
「従者も心配しておりますし、私は戻ることにします」
 リーファが、送っていこうか、と言おうとしたその時、穏やかな男の声が流れてきた。
「その通りですよ。レナーサ様。貴女のために、一体何人の付き人の首が飛んだとお思いになっているのですか?」
「ローリア、すみません。私、どうしても……」
 リーファは、カフェテリアの前に立つ、眼鏡の優男を目を細めて見た。見たことがある人物である。黄金色の髪、鳶色の瞳、そして、裏の読めない微笑。自分の後ろにいるほかの従者に、レナーサを預け、しっかりと指示を出すその横顔。
 リーファが、その記憶に辿り着く前に、仕事を終えた男は、にやりと笑った。
「リーファ・シャーナ・シュライゼ。脱獄したとは聞いていましたが。まさか、このようなところで会うとは……」
「君は、あの時の役人か?」
 リーファは、ゆっくりと息を吐きにながらも、間髪入れずに尋ねた。
 男は、口元に笑みを残したまま、頷いた。



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