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行方不明の御妃様


 リーファは町を歩いていた。ミューシアに似合う髪飾りはないか、とか、自分用の新しい着物にしたいようなものはないか、美味しそうな食べ物はないか。そんなことを考えながら、品物を見て回るのは楽しかった。
 市場を一巡しただろうか。リーファは、ふわりと藍色の着物をはためかせ、疲れたな、と思いながら、少し暗い道に入る。どこか休める場所はないか、と周囲を見渡すと、薄暗い路地から、綺麗なドレスに身を包んだ女性が走ってくるのが見えた。
 顔には、恐怖が浮かんでおり、背後には、男が数人、女性を追いかけるようにして走っている。
 リーファは、困っている人を放ってはおけない人間だ。おそらく、身なりの良い女よりも、追いかける男の方が、リーファと階級も近いだろう。しかし、そんなことは関係ない。リーファは、路地に向かって走る。
 リーファの動きに、女は、ぱっと明るい表情を覗かせ、何かを喋ろうとしたが、リーファは女の横を素通りした。
「二ュクシア・ジャスティス(裁きの闇夜)」
 女と男の間に魔術を放つ。魔術特有の音と共に、路地に積んであった木の箱が壊れる。足止めにはなるはずだ。
「ありがとうございます」
「早くこちらに」
 可愛らしく笑い、御礼を言ってくれた女性の手首を掴み、リーファは走る。
「あっ……あの……」
 女性は戸惑っていた。リーファは、女性が自分を怖がっているのだと気付く。
「足止めしただけだから。もう少し頑張ってくれる?」
 リーファは、女性に笑いかけ、そのまま、カフェの建ち並ぶ静かながら、人通りのある通りに出た。



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