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偉大なる神への宣戦布告


 声の主は、小さな切り株に腰掛け、穏やかな微笑を浮かべ、リーファたちの方を見ていた。
 シュウよりも少し背は低いだろうが、僅かに幼い顔立ちをしていた。亜麻色の髪に、鳶色の瞳。透き通るような白い肌に、黒い大きな羽根が冴える。
 美しかった。顔立ちも、その羽根も、透き通るような肌も。普通の女の子だったら、うっとりと目を細め、頬を染めるであろう美貌。
 しかし、そこにいたのは、普通の女の子ではなかった。
「天使ーっ」
 ミューシアは、青い瞳を細めて威嚇しているし(天使は仲間の仇だから当たり前だ)、いつの間にか木から飛び降りていたシュウは、黙って抜刀している(とりあえず、破壊できるものは破壊したい性格)。
 リーファは、こんなに綺麗な人なのに、初っ端からこんな扱いは可哀想だ、と思ったが、ある意味、傍観者を維持する自身も、それに一役買っていることに、気付いていない。
 しかし、突然現れた美しい天使の方も、それを望んでいるわけではなさそうだった。
「君の所為で、天使の数は半分に減ってしまいましたよ」
「俺の前に、もの寄越すってことは、破壊してくれってことだろう」
 天使まで殺していたのか、とリーファは思った。そして、シュウの極めて危険な思想の混じった俺様思考に、リーファは一々突っ込まない。
 その天使も単なる大義名分、というような気持ちが全面的に見えていた。仲間の仇に言うこの台詞を、呆れましたね、とでもいうように、溜息混じりに笑うところからして、それについて怒っているようには思えない。
 つまり、どっちもどっちなのだ。
 戦いは今にも始まろうとしていた。しかし、リーファは少し離れた所にある大木の下に腰を下ろす。
 シュウだけでも手におえないのだ。ミューシアまで、戦う気満々で、さらに、向こうも好戦的な雰囲気である。双方生命力は強そうなので、どちらかが負けそうになったら助けてやろう、とリーファは思った。



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