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偉大なる神への宣戦布告


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 リーファは地面に文字を書いていく。ミューシアは、ぽかんと口を開けてそれを見ている。
「この国の身分の頭文字の順番。二十六ある。Rがレンシスっていって王家。Qがクィルナ。王の親戚。そして、ずーっと下にいって、最後がS。シャーナだよ。動物や人間の死体を扱う仕事をしている。私がこれだね」
 身分制度。どれだけ貧しくても、どれだけ階級が下でも、皆が知っていることだ。こつん、とSの文字を叩くと、ミューシアが首を傾げた。
「リーファ、一番下なの? 強くて、お料理も狩りもできちゃうのに、何で?」
「何でだろうね。私も分からない」
 嫌われる職業に従事する者が嫌われる。それが、制度化したのが、身分制度。そこまで話すのが面倒だったため、リーファは話さなかった。それに、おそらく、ミューシアはそんな答えを望んではいなかっただろう。
「ふーん、人間って変なの」
「手前。こんなもの教えて何にもならねぇだろ」
 木の上で寝ていたはずのシュウの声が降って来る。そして、シュウは、リーファが口を開くより前に、首を傾げるミューシアに向かって、にやりと笑う。
「壊すからな」
「壊しちゃうの? 壊して良いの?」
 ミュウはリーファとシュウを交互に見る。
 (面倒臭いし)シュウに任せておけば良いだろうと、リーファは思ったが、甘かった。
「壊すしかねぇだろ。世の中の物全……」
「これは、壊すべきだと思ってる」
 シュウの危険思考は健在である。ミュウにそれが伝染したら、国どころか世界が滅びそうなので、リーファはシュウを睨みつけた。無駄な殺傷は御免だ。
「ミュウ、壊すの得意。壊すの手伝う」
 えへっ、とミュウは笑う。鮮やかなブルーの髪を撫ぜると、飛んで跳ねて喜ぶ。常にだるそうなシュウと大違いだ。
 異様なほどに澄み切った風が流れた。リーファは、目を細める。
「それは困りますね」
 硝子細工のような声が響いた。



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