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階段の無い国
リーファたちは、森のかなり奥に入ったところで、野宿をすることにした。
リーファは魔術を駆使して、適当な動物を狩り、手際よく調理した。ミューシアは目を輝かせてそれを見ていた。
できた料理も、ミューシアが美味しそうに食べるので、リーファが、シュウよりミューシアの取り分を多くすると、シュウは黙り込んだ。怒っているらしい。当然のことながら、リーファは全く何もせずに、シュウを放っておいた。
そして、本日の出来事の事情が掴めず、疲れるだけ疲れたミューシアは、すぐに眠り込んでしまった。
夜は深い。そんな中で、リーファは木々の狭間から天を仰いでいた。シュウは木の幹の分かれ目のところに座り、長い手足をだらりと垂らしている。
「手前、あれで良かったのかよ」
「何が?」
上を見上げる。シュウが顎でしゃくっていたのは眠っているミューシアだ。
「何で?」
そう尋ねると、シュウは切れ目を、僅かに丸くした。
「手前を裏切っただろ」
「いつ?」
リーファは分からなかった。ミューシアが自分たちを攻撃してきたのは、危険を感じたからである。裏切ったわけではない。
「もう、良い」
シュウはそう言って、ぶらりと手足を動かす。しかし、リーファは納得いかなかった。
「ミューシアが裏切ったと思ったわけ?」
そう尋ねると、シュウは天を仰いだまま、呟いた。
「面倒だ」
「は?」
「面倒な奴だぜ。手前は」
もう、俺は寝るからな、とだけ言って、シュウは何も言わなくなった。