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鎖を引き摺る兄弟へ


 幼いヴァルシア王子は城の探検が大好きだった。ある日、いつものように護衛を上手く撒いて鍵のかかった部屋の小窓を覗き込んだ。その部屋にいたのが黒い髪の同じぐらいの年の男の子、ウェルティアだった。ヴァルシアは、部屋の中に閉じ込められている同じくらいの少年に話しかけたが、母親以外の顔を見たことのなかったウェルティアは驚いて毛布の中に入ってしまった。
 しかし、ヴァルシアはしつこくウェルティアのいる部屋に通った。そのうち、ウェルティアも毎日やってくる元気な少年に興味を持ち始め、会話が成立するまでになった。
「ウェルティアのお父さんは誰?」
「分かんない」
 しかし、ヴァルシアは彼が何者なのかを知ることはできなかった。
「お母さんは?」
「いるけど、僕は嫌い」
 その言葉から、私生児であることは分かっていた。しかし、どのくらいの家柄の子どもなのかは全く分からなかった。
「どんなお母さん?」
「嫌なお母さん。いつも僕をここに閉じ込めているし、僕が馬鹿なこと言うと怒る」
 部屋に閉じ込められていたウェルティアだが、知識だけはあった。そして、それを運用する力もあった。彼は母による英才教育を受けていた。
 彼の母王妃は王に命じられたようにヴァルシアのの母として振舞いながら、隠し育てていた我が子の即位を狙っていた。

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