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鎖を引き摺る兄弟へ


「父によると、兄は覇王セフィリス・サラヴァンの生まれ変わりらしいんだ。神がそう言っていたようだ」
 そして、声を低くしてそう続けた。
「あの覇王の……」
 レナーサは驚いた。まさか、ウェルティアが王位を継承できなかった理由がこのようなものであるとは思ってもいなかったのだ。しかし、ヴァルシアはレナーサの驚きの表情を見ると、慌てて続けた。
「勿論、私は信じていないよ。兄は優しくて臆病な性格だった。あの時は私も驚いた。あんなことになっているとは思わなかった」
「優しくて臆病でいらっしゃったのですか?」
 レナーサの問いにヴァルシアは頷いた。信じられるはずがない。レナーサにとって、ウェルティアは臆病とは程遠い印象だった。
「私は兄があのような人になっていたことは知らなかった。でも、生きていることは知っていた。私が兄のことを少しでも悪く思えば呪いが効く。それは兄が生きてたいる証らしい。僕は魔術について深く知らないから分からないけどね」
 ヴァルシアはそう言いながら咳き込んだ。レナーサは背中を冷たい汗が流れるのを感じた。
「殿下、呪いとはどのような呪いなのですか? 誰が何のために?」
 レナーサも魔術や呪いについては詳しくは知らない。だからこそ、不安を覚えた。
「話は長くなる。まずは、兄と僕の関係について話さないといけない」
 レナーサを安心させるかの如く、ヴァルシアは微笑んだ。
「そもそも、兄がこの城を負われたのは私が原因なんだ」
 そう言って、ヴァルシアはウェルティアに出会った時のことを話し始めた。

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