5

美しい町



 路地からふらりと出た二人を出迎えたのは、哀れに思えるぐらい目立っている二人組だった。
「リーファ、どこにいたの?」
 ミューシアはリーファに抱きつく。リーファは、シュウと話をしていただけ、とさらりと言うと、ミューシアを抱き上げた。
「探したのですよ」
 宿も取っておきました、とビアンカは笑顔を浮かべながら言った。
「何しろ、目立ちますからね」
 漆黒の大きな翼に明るい頭髪、人間には見えない美貌を持つ男は、リーファに笑顔を向けた。リーファは、ありがとう、と微笑んだ。
「主に手前がな」
 無表情のシュウはビアンカの爽やかな笑顔を見てから、珍しくまともなことを言った。シュウの無表情の理由にリーファは気付かない。
「多分、俺はこの中では一番目立たねぇな」
 それには同意しかねる、とリーファはシュウの派手な衣を見ながら思った。そして、黒とか濃紺の方が似合うのに、とも思うが、何も思っていなかったことにする。そんなことは口が裂けても言えないのが、リーファ・シャーナ・シュライゼという人間である。
 静かにその場を去ることなど、不可能に近いし、実際にできていない四人は、お世辞にも静かであるとは言えない様相で、宿へと歩いていく。その騒ぎの中に、リーファの呟きは消えた。
「それでも、この国にいる孤児全員の衣食住を保証しても、金の尽きない人間は存在するだろうね」
 リーファが浮かべた笑顔は、嘲りと諦めを孕んだ複雑なものだった。

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