3
美しい町
シュウは賢かった。彼は、もし、リーファがリーファとして得てきた知識だけで、子どもに食べ物をやってはいけない、と言ったら、シュウはそのまま聞き流しただろう。しかし、リーファがそうではないことを、シュウはすぐに悟った。
勿論、彼はそれを意識しているわけではない。しかし、理論よりも感覚で動くシュウの言葉は、的を外すことは少ない。今回もそうだった。
シュウはリーファを恨んでいるわけではない。気持ちの整理をしっかりとつけていたため、荒々しい感情をリーファ・シャーナ・シュライゼに向けることはない。しかし、シュウはセフィリス・サラヴァンを憎悪していた。
バルベロでさえ許容できないシュウは、リーファかセフィリス・サラヴァンを許容しているとは思ってもいない。
「おい、何か言えよ」
最初は強気で聞きだそうとするが、リーファの表情を見たからだろう、その乱暴な声はやや小さくなる。
「気分悪いのか?」
本音を言っているかどうかは兎も角、はっきりと物を言うリーファが、黙り込んでしまっていることに、シュウは不審感を露わにする。
「大丈夫」
リーファがゆっくり息を吐く姿を見て、いくらか安心したのか、シュウは溜息を吐いた。
「手前なぁ、何考えているかさっぱり分かんねぇよ。理由言えよ、理由っ」
覇王は賢かった。異文化や思想を許容するだけの懐の深さがあった。しかし、それはバルベロに理解されることはなかった。覇王自身も、まさかバルベロに己が理解されていないとは思ってもいなかった。
何を考えているのかが分からない、とバルベロが言えば、覇王はバルベロが納得するまで自分の考えを話しただろう。しかし、バルベロは尋ねなかった。二人は近くにいながら、お互いに離れていくばかりだった。
シュウの言葉は、バルベロが言うべきだった言葉であり、覇王とリーファに必要な言葉だったのだ。