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美しい町


 リーファが仲間にうんざりしているにも、わけがある。
 その港町は、確かに美しかった。煉瓦造りの家が並び、道には石が敷き詰められていた。リーファは大通りを歩いていたが、大通りを行きかう人々を見ていたわけではなかった。
 リーファがみていたのは、家と家の間の小さな道を走り回る、泥だらけで痩せた子どもたちだった。
「どうした、リーファ」
 シュウは見えないものは見えないタイプだが、見ようと意識している者は見える。リーファは、シュウに気遣われていることぐらいは気付いていた。そして、それがまた、リーファにとっては嬉しくもあり、また、不快でもあった。
 何故、好意のある相手に気遣われ、不快であるのか。それには、リーファ・シャーナ・シュライゼが、シャーナの魔術師であることに由来する。
「ああ、子どもか。食べ物を欲しがっているから、食べ物をやろうと思っているのか?」
 リーファが何かを言う前に、シュウは気付いたようだった。
「違う。こんな子に、食べ物をやってはいけないよ」
 セフィリス・サラヴァンもそうであったが、リーファ・シャーナ・シュライゼは、言葉が足りないことが多い。そして、困ったことに、セフィリスもリーファも、自分でそのことに気付いていなかった。
「シャーナのくせに、人を労れねーのか?」
 ぐいっと肩を掴まれ、暗い路地に引きこまれ、壁に押し付けられる。リーファは抵抗することはしなかった。シュウが使った力も強くはなかった。もし、シュウが本気で力を使えば、シャーナの体は砕け散ってしまう。
「君は、飢えた子どもをなめている。この国をなめている。何も分かっていない」
 蔑まれた経験と覇王の知識を持ち合わせているのは、今ここにいるリーファ・シャーナ・シュライゼだけである。
「リーファ・シャーナ・シュライゼ、それはお前の言葉か?」
 しかし、リーファは静かに瞼を落とす。口を閉ざした魔術師は、剣士から目を逸らす。

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