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バルベロとエレカ


 冷たい地下牢。響き渡る声は、嬌声と悲鳴が入り混じっていた。毎晩毎晩、それが途絶えることは無い。
「じゃあ、何でこんなことするの……エレカがいるじゃん……エレカだったら……ここまで酷くはしないでしょ」
 息も絶え絶えで、すすり泣くような女の声。
「あの女のことなどどうでも良い。俺は最初から、お前しか見えていなかった」
 包み込むような広さを持った男の声は、妙に落ち着いていた。
「それに、何故、俺を拒む理由がある? 俺が最も嫌うことを、お前はやった」
 男の笑顔は何処までも深い狂気を孕んでいた。
「愛してるよ、バルベロ」
 男のしなやかな低音が広がった直後、劈くような悲鳴が、冷たい石壁に反響した。
 悲鳴を聞いた男の笑顔は、見る見るうちに深くなった。そして、男はただ一人、声を上げて笑い始めた。闇に沈むこと無き声か、空間を支配した。
 否、支配しているように見えていただけだった。繰り返す苦痛の中で、ぐったりと力なく体を横たえていた女。しかし、鮮やかな青の瞳には、未だに強い光が宿っていた。


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