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バルベロとエレカ


 ミューシアは、少しも変わっていなかった。
「リーファ、会いたかったぁ」
 大人しくできないからということで、森でビアンカとお留守番をしていたミューシアは、リーファを見るなり、飛び込んできた。
「急にいなくなってごめんね」
 一年前していたように、ミューシアを抱え、鮮やかな青い髪を撫でてやる。そして、そのまま、男二人に気になっていたことを尋ねた。
「それで、私がいない間は食事はどうしてたの?」
「知りてーかぁ?」
 にやりと人の悪い笑みを浮かべてシュウが尋ねてくる。
「いや、別に」
 これは、絶対に聞かない方が良い、とリーファは思った。しかし、リーファの腕の中で聞いていたのか、ミューシアが大きな青い瞳をリーファに向けて、言った。
「ひもじかった。猪とか熊とか、食べられなかったの。だから、人間を食べていたんだけど、人間不味いし、食べるところが少ないの」
 美味しい、と言われても困るのだが、リーファは不味いと言われても困る。それ以前の問題だ。皆で人肉を食っていたのだろうか。シュウは人肉を食べるなんて以ての外だろうが、ミューシアとビアンカなら普通に食べるだろう。容易に想像がついてしまうのが悲しい。
 現実逃避も兼ねて、長い前髪を掻き分けてやると、ミューシアは嬉しそうに笑う。それは非常に可愛らしかったのだが、その分、リーファの心は、さらなるダメージを受けた。
 可愛らしい女の子が人肉を食べている姿を想像して、衝撃を受けない人間がどこにいようか。


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