5
階段の無い国
町外れにある山は、鬱蒼と木が茂っていた。そのため非常に薄暗いのだが、牢屋暮らし十年のリーファにとっては、清々しいものだった。
「ところで、何でドラゴンが町を荒らしたりするんだろうね」
リーファは草木を掻き分けながら、背後を歩くシュウに尋ねる。
ドラゴンが、町を荒らすなど、聞いたことがなかった。
「破壊したくなったんじゃねぇの?」
「それは君だけだ」
やる気のない答えは、内容までやる気がなかった。否、内容までやる気がなかったと思いたい、といったところだ。
本気で言っているとしたら、それはかなり問題である。
暫く歩くと、小さな花畑に出た。白い小さな花が咲き乱れ、さこだけは木がなく、温かい陽光が差している。
リーファは、花が嫌いなわけではなかったが、好きなわけでもなかったので、花よりも花畑の真ん中に倒れている幼い少女に目がいった。
リーファはすぐに少女のところへ駆け寄る。その少女は、人間とは思えない鮮やかな青い髪
と青い目をしていた。目は辛うじて開いている。
外傷はないようだが、顔色は頗る悪い。
「大丈夫?」
リーファが声を掛けると、少女はリーファの方へ顔を向けた。
「ミュウ、お腹空いたのー」
間延びした声に、リーファは思わず少女から目を離し、同じく固まっているシュウの方を見てしまった。