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なよ竹のかぐや姫


 レナーサ・レンシス・クィルニアの従者、ローリアは、城下にある自らの屋敷の書斎で読書をしていた。
 美しい木目の壁は、ローリア自らが選んだものである。とてつもなく大きい屋敷ではないが、決して小さくもないそんな屋敷は、ローリアのお気に入りだった。
 そんな静かな屋敷の一室、書斎の扉を、控えめに叩く音がして、暫くすると、ゆっくりと扉が開いた。
「ローリア様、お食事が出来上がったそうです」
 入ってきたのは、鳶色の髪のメイドだった。ローリアが、一年程前に拾ってきた時には、全く仕事ができなかったのだが、最近は大抵のことはこなせるようになってきた。
 ローリアは一番のお気に入りだったが、対する彼女は、あっさりとしていた。
「エウラドーラ、ありがとう」
 ローリアは微笑みかけたが、メイド、エウラドーラは愛想笑いさえも返さなかった。ただ、自分の仕事は済んだとばかりに、その場を去っていく。
 エウラドーラは、生気のない目をしていた。そして、その目には、ただ目に入るものしか見えていないかのようだった。
 ローリアは、エウラドーラの去った部屋で笑っていた。普段は滅多に出さない声を出して、笑い続ける。誰もいない書斎で笑い続ける物静かな男。それは、不気味以外の何物でもない。
 そして、その目は、目に入らないものしか見ていなかった。



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