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なよ竹のかぐや姫
闇に包まれた牢獄の一室に、一組の男女が座っていた。
「へぇー、月に帰っちゃったんだ」
女の声は、決して淡々としているわけではないが、そうかと言って、暗く重々しいものでもない。特徴がなく、何の深みも感じられないが、軽軽しくもない声だった。
「無責任だとは思わねーか?」
男が面倒臭そうに言った。
「惚れた方が悪いと思うけど」
女がさらりとそう言うと、男が非難の混じった目を向けた。
「お姫様だろう。月に王子様がいるかもしれないし、本当に残りたいのなら、残れば良いと思うけどな」
「世の中、手前みたいな女ばかりじゃねーよ」
男は、何の含みも持たせないような声で言った。
牢獄は、未だに暗い。