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覇王セフィリス・サラヴァン


 薄明かりの差し込むレンシス大聖堂。神に最も近いその場所で、リーファは、神と対峙していた。
「この国を壊してよ」
 リーファは静かに言った。念のための魔術は発動寸前だ。
 神は、転生させる前に、記憶を消すのと同時に、魂の持つ力を奪い取る。自らが神であるために。自力で転生したリーファの魂は、神に触れられていないため、神に抵抗できる魔術の力はあるはずだ、とリーファは思っていた。
「こんな差別だらけの国を作って、何をする気だった? 人間の手で生まれた国だったら、人間の手で止めるのが筋だけど、神が創った国を何故、態々人間が壊さないといけないのかな」
 神は、階段に凭れ掛かったまま黙って聞いていたが、リーファが全て言い終わると、口を開いた。
「作ったのは人間だ」
 相変わらず、人の匂いを欠片も感じさせない声だった。声と言えるのかも分からない。むしろ、音と言った方が正しいだろう。そんな声だった。
「そして、神は絶対故に神であり、人は神が絶対であることを望んだ。望むのは人間で望まれるのが神。人の心に住んでこそ、神は神になれる。お前は、神が要らない、と言い切れるか?」
 神はそこまで言うと、ゆらりと動き出した。リーファは、魔術を発動させようとしたが、それは叶わなかった。
 神が消えたのだ。どこへ行ったのか。リーファは背中に冷たい汗が流れるのを感じた。
 そして、リーファの予測は正しいものとなった。ふと背後に気配がしたかと思うと、首に輝く何かを当てられる。
「神という力を以って、お前より強くなる者もいよう」
 リーファは、耳元に囁かれる声に、僅かに表情を歪めた。それは、単に神が背後にいて、自分が不利であることによるものではなかった。神の言葉によるものだった。
 それが、命取りだった。



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