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階段の無い国
町に着くと、リーファは、シュウと森で会う約束をして、自身もすぐに森に入った。シャーナというだけで、不快な思いをするのは御免だった。大体、金もないのに町に入って、何をするのかも分からない。
暫くすると、シュウがやって来た。シュウと共にやって来たのは、血の臭い。
「誰か殺してきた?」
「殺しちゃいねぇ。出し惜しみをするノルナがいたもんでさぁ、ちょっと脅してきてやった」
ノルナは、兵士高官の身分である。シュウの強さには、リーファはあえて触れない。リーファは、なるべく深入りしないように、と話を変える。
「ところで、肝心のお金の方は?」
「完璧だぜ。服も買ってきた」
ほらよ、と着物の影に隠れていた服を出す。
それは、シュウの着ている服と似たような形だった。ただ、その色は、紅ではなく藍色。
「何故、異国風の着物なんだ」
「シャーナだと分からないだろ」
確かに、と納得する。ふわりとそれを羽織り、草でできたサンダルのようなものを履く。
「それと、良い話も持って来た」
にやりと笑うシュウに、僅かな警戒心を抱きながら、リーファはどのような話かを尋ねた。
それは、山に住むドラゴンの話だった。
ドラゴンは、普通、山から下りてくることはない。しかし、最近、一匹のドラゴンが町を荒らし回っているらしい。そのドラゴンは強く、軍ですら太刀打ちできないらしい。
「シャーナがドラゴンを倒したなんていうことが知れ渡ったら、色々壊れるぜ」
嬉しそうにシュウは言った。当然のことながら、シュウの嬉しそうな笑みと、人の悪そうな笑みは、ほぼ同義語である。
山は、森の反対側にあるらしい。リーファは、シュウと共に、町を横断することになった。