「それで、私めはいったい何を成せば良いのでしょうか」
 問の形ではあるもののただひたすらに高圧的な語気に、そういえばこいつらは末席とは言え神であったかと思い出す。
 人の形を模して人のように話し人のように動くそれらと過ごすようになり、しばらくが経った。時に人間より人間らしいそれらは、今のところは眺めていて飽くことはない。
「何もせずとも良い、と言えば?」
 からかいを隠す気のない声音が気に障ったのか、深くなる眉間の皺とますます吊り上る眦がひどく可笑しい。
「困ります。武器は使っていただかなければ」
「武器は喋らないし意思もないだろうよ、お前らは違うからな」
 さてはて困ったなぁ、と首をかしげてみせると、最早隠す気もなく舌打ちをされた。一応こちら側が主でこちら側に主導権があるのだが、成人男子の形をしたそれにつき従わられたいわけでも、ましてや信を寄せられたいわけでもない。自然と扱いが雑になるのは仕方のないことだろう。それに応じて、相手の反応が宜しくなくなることも。
「主様、本日はこれで失礼仕ります」
 深海色の目が射抜かんばかりの鋭さで向けられ、すぐに伏せられる。ばさりと着物を捌いて、そのままこちら返事を待たずに踵を返された。右側で高めに括られた髪が少し遅れてそれに従う。少し間をおいて、離れたところで戸を乱暴に閉める音。
 こらえきれずに声を上げて笑う。本当に、あの刀は面白い。




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