「おはようございます。」
「・・・・・はよ。・・・・何さ、それ。」
「・・・お寿司です」

教団に来て初めての食事。
食べてみたら超うますぎてやべーとびっくりしていたら昨日の赤髪の男がいたので、声を掛けてみた。なんか、びっくりされて間があったけど。そういえば運んでくれてありがとうございましたと言えば、また間が空いて反応してくれておう、と一言。・・・・何なんだ?

「・・・・・・おすし、って何さ?」
「日本料理で生の魚を酢飯の上に乗せたものです」
「生の魚を!?」
「はい。・・・あー・・・外国人にはキツイかもですね」
「うっわ考えられねぇ・・・てかそれ何の魚さ?」
「これは海栗です」
「・・・・・・うに?」
「黒い刺々した動物の中身の事です。こう・・・割るとオレンジ色のどろっとしたのが出てくるんです」
「ぐっ・・・グロデスク・・・・・!」
「食べてる人の前で失礼ですね。日本人だったら普通ですー。別に小腸とかじゃないですし。マイルドですよ濃厚です」
「濃厚とか言うな馬鹿!リアルさが増す!に、日本人って逞しいさ・・・・・」
「えー・・・・貝とかと一緒ですって」
「いや、ていうか朝からそんなものを・・・・」
「朝から皆食いますってー」
「うっそ」
「嘘ですけど」
「嘘なのかよ!」

目の前でブツブツともう嫌だコイツ仲良くなれないとか呟くこの男、さっきからすごく失礼じゃなかろうか。いや、昨日からそこそこに失礼だ。・・・まぁ、自分もあまり人のことは言えないけど。
たしかに昨日は少し大人げなかったというか、ついやり返されたらやり返すのがポリシーというか何というか。・・・・・そうだよ。元はといえば奴が先になんか初対面の癖してあんな風な態度をとるからだ。
・・・うん。私あんまり悪くない。ていうか、仲良くなれないのはこっちのセリフだ。ばーかばーか。誰がこんな赤髪。第一印象というかパッと見て怖いおにーさんじゃないか。なのに中身ヘタレとか。ギャップ萌え?あるあ・・・・ねぇよ。むしろ萎えるわ。最悪ー。ないわー。これで兄さんキャラで動物に優しいとかのギャップだったら良かったのに・・・・

「・・・・・・・なんか今すごくお前失礼なこと考えてるだろ」
「・・・・・・何でわかったんですか」
「目が言ってるさ」
「なるほど」

不覚だった。つい、嫌悪感丸出しだった。ヤバイヤバイ。ただでさえいきなり現れて怪しい奴なんだから、ある程度は愛想よくしとかないと・・・


──────コトン、


「ほら、」
「・・・・・・?何ですか、」
「フルーツゼリー。朝からそんなもん食ってたら身体に悪いさ」

後ろから伸びてきた腕にびっくりして、その手の先を見れば目の前のお寿司の横に置かれたのはゼリーだった。・・・・美味しそう。

「・・・・・でも、これ貴方が食べるつもりだったんじゃないんですか?」
「へーき。あとでおかわりするつもりだったからその時頼む。」

「・・・・・いや、いいですよ。悪いですから。すみません、気をつかわせてしまって。」
「・・・・・・いーから。そんなに警戒すんなさ。」
「警戒をしているのはそっちでしょう?」
「そりゃあ昨日あんなセクハラされたらなぁ?」
「先に仕掛けてきたのはそっちです」
「えー。でもあれはないさー」

・・・・・・・・心臓に悪い。
警戒、してるのは、たしかだ。図星をつかれて、急になんか隣に座られて。何なの、さっきからびっくりしすぎて何が何だか。

「もー。教団の痴女さ」
「何ですかその自分だけが被害者みたいな。第一、違いますよね?警戒しているのは。ヘラヘラ嘘臭い」
「・・・・思ったより、あったまいーんさね?」


・・・・・・・しまった。つい、本音が。
たった今、さらに厄介なことになった気がする。今からでも・・・・・・いや無理だ。ごまかしきれない。

「・・・・・・すみません、出過ぎた事を言いました」
「・・・・・・せっかく今外れたと思ったのに」
「・・・・・・?」
「敬語、使わなくていいさ。苦手なんだろ?」
「・・・・・・・・・」

優しく接して、油断させるのが目的なのだろうか?何が目的なのだろう・・・わからない。この男、ヘラヘラしていて、ヘタレの癖に・・・一瞬気を許してしまいそうになった。侮れない。

「・・・・・・・・・・・わか、った」
「ん。」
「・・・・・・・・・・・、」

返事をすれば、今度は無表情で頭をぐしゃぐしゃと撫でてきた。
・・・・・・・何なの、本当に───・・・

「・・・・・・・・セクハラ。」
「違うさ!!!!!」


breakfast

(焦りすぎ。)
(・・・・・・・・・・・・・)


頭を撫でるその掌が、
いつも朝食を作ってくれるあの人によく似ていた。

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