01


「篠ノ女くんなら大丈夫じゃないですか?」

「そうよ。どうせまたふけたんでしょ?」


篠ノ女くんがいなくなったらしい。
別に彼ならひょっこりちゃんと時間になったら現れそうだけど。


「いかんいかん帰りのバスのこともある
念のためお前ら探してきてくれないか?」

「自分で探せばいいじゃん」

「見つけたものには褒美をとらせようぞ」


それから私を除いた女子二人は早かった。
お金とは言ってないとセンセーが焦るが彼女達の耳には入ってないだろう。

・・・・・・お金っていくらだろう。



「諭吉ですか、諭吉ですねセンセー太っ腹」

「先生たまにお前の将来心配になる」

「はは・・・・」


それから六合は探しに行き、私が渋っていると、担任は「昼飯奢ってやる」と宣言をしてくれた。


「・・・・・・・・・わかりました」


私はそれなら、と彼女達が向かった方向へとりあえず歩き出したのだった。



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「えー・・・・と、」


迷子になってキョロキョロしていたらおじさんに地図を貰った。
どうやらここは裏通りで行き止まりらしい。

とりあえずは、ここを一旦離れて屋台がたくさんある方へと行くのがベストだろう。・・・・混んでるだろうな。あ、この際どこか座れる場所を探して時間を潰そうか・・・うん。そうだ、そうしよう。それがいい。たしかお団子屋さんがあった筈。そこで休んでいよう。この道を真っ直ぐ行けば・・・



「あれ、みょうじ?」



呼ばれた方を振り向けば、キョトンとしている六合がいた。



「・・・・・・何?どうしたの?」

「いや、何だかキョロキョロしてたから・・・・篠ノ女探してんのかなって。みょうじにしては珍しいなって思ってさ」

「・・・・・・・昼飯、奢ってくれるんだってさ」

「あーなるほど」


そんなこと言われたら休もうと思ってたなんて言いづらいじゃないか。
ていうか珍しいって何だ。それって私が不真面目みたいな・・・・いや、あながち間違ってはいないけど。



「じゃあね」

「あ!そっちは行き止まり・・・」

「そんなこと・・・・」



───あぁ、そういえばそうだ。行き止まりだった。


だが────・・・




「「!?」」



ビリッと電気が走ったように、身体が硬直した。



「・・・・・な、にあ、れ」


多分、あれの後ろに続く道はCGで、本当は行き止まりなんだと思う。



────でも、


あれは、あの猛獣のような妖怪は、

CGで、演出なんだろうか──?


「(っそうだ、・・・・ゴーグル、)」

つい、目が離せなくて忘れていた。
ゴーグルを取れば、あれがCGだって、演出だってわかる筈───、



「ちょっと通りますよー」

「!?
っ何してんの!?」


気がつけば、有ろう事か隣にいた筈の彼はあれの横を横切っていた。


「え?だってここよく見たら行き止まりじゃなくて───・・・」

「っ危ない!!!」



───────ダンッ!!!!



「っなまえ!!」

「う、・・っぁ!、」



咄嗟に、飛び出していた。


押さえつけられて、酸素が上手く取り組めない。

痛い。右が、凄く。

・・・どうしよう
逃げなきゃ。どうやって?頭の中で、警報が鳴り響く。



─────とにかく、



「────っりく、ご、早く、逃げろ、っ!」

「・・ん、なことっ・・・できる訳、ないだろっ!!!」



そう言ったかと思えばこちらに何かを投げてきた。

石か、それとも砂利か。
とりあえず、獣の目ん玉に向かって何かを投げつけたみたいだ。
そうしたら、唸り出して、急に圧迫感がなくなった。



「(っ、足、退けた、)」


すぐさま離れて、安堵したその時、




〈うぐぉおおおおおお!!!!!!!!〉


耳を劈くような唸り声が響いた。


「、っ!わぁあ!?」



────注意は、私から彼へと映ったみたいだ。



「、!?や、めっ・・・・・・、・・・」



そこで、私の意識は途切れた。

意識が薄れゆく中、ズキズキと押し付けられた頭の右半分が痛かった。