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────そういえば、いつからだっけ?


私が、彼を避け始めたのは。



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歴史って、無くてもいいと思う。


「えーではこれからテストの返却を行う!
赤点のやつは名前と点数読み上げるから覚悟するよーに!」


その言葉を担任が放てば、クラスが少しざわつく。


「・・・・・なまえー、アンタヤバいんじゃあないっ?」


ニヤニヤした顔で後ろ、つまり私を見たこの女は私の中学からの友達である。名は堂桐 小豆。


「・・・・・大丈夫。覚悟はできている。
それに学年の大半が何故か私の歴史の知識の無さを何故か知っているんだなコレが。
なんかもう羞恥心とか味わう前に知られてるから意味は無し?」

「いや、いつも学年で30位以内に入ってる奴が歴史だけいつも赤点だったらそりゃまぁそこそこ目立つだろうさ。」

「うん。いつも学年順位貼り出される度に尚且つ赤点者貼り出される度に見知らぬ方から肩をポンと叩かれて生暖かい目で頑張れよと言われていつも甚だしい気持ちとじゃあお前はどうなんだと言う複雑な気持ちにいつも追い込まれるんだ」

「うん。なんか今の話聞いて違う意味で苛々してきた。
凄い殴りたくなってきた。殴ってい?」

「嫌だよ。何言ってんの?
お前は数学がんばれよ」

「しね!」


ぎゃあぎゃあと小豆と言い争っていればやかましい!!と担任の声が掛かり
少しだけだが、クラスのざわつきが収まった。



「こーんなサービス問題だらけのテスト満点が普通だぞ!?
それをどうしたらこんな地を這う点が取れるんだ特に!」



びしっ、と指した方向を見て何だと首を傾げれば



「みょうじなまえ12点!

六合鴇時!5点!お見事!!!」
「げっ」

「最悪の最高得点」

「今までで一番悪いね、アンタ」

「最高得点言いません!
うん、お前らはなんなの?
どうして数学や国語ではちゃんと取れんのに歴史はこうなの?
先生に対するアンチテーゼ!?」

「いやいやいやいや・・・・・、」

「仕方ないよ。先生、潔くそこは諦めよう。うん、何で会ったことない人の名前なんかをわざわざ覚えないといけないんですか?」

「覚えないといけないの!!!
ふんっ、今回赤点の奴には特別サービスの補習を用意したからありがたく思えっ」

「は?」

「へ?」


・・・・・嫌な、予感がする。


「春休み期間に強制社会科見学!!
先日オープンしたばかり!幕末巡回展にご招待!!」

「はああ!?休みのあいだ!?何ソレ!?」

「強制、・・だと・・・・・・!?」


ふ、ふざけるなよ!私の睡眠時間を減らす気かこのおっさん!


「・・・・・拒否します」

「いや、拒否したらお前進級できないからね」

「一教科ぐらいいいじゃないですか」

「それを俺に言うの!?」


その後もなんとか目の前のジジイに説得を試みたが全く効かなかった。



「・・・・・・・」

「諦めろ?」


ポン、とニヨニヨしながら私の肩を叩いた友人に殺意が沸いて来る。
ふざけるなよ。この春休みはニート生活に励もうとひそかにわくわく心待ちにしていたんだぞ。ふざけるなよ。


「さいっ、あく・・・・・・・、」


そう呟けば私は机に沈み込む。

この前と同じようにテストだけだと思っていたのに。
補習があるなんて聞いてない。

そんな事を思いながらふと顔を上げれば目に映すのは茶髪の歴史が大嫌いな男。



「・・・・・・・・・あー、」


いい加減早く席替えしたい。
この席は居心地が悪い。嫌でも彼の行動などが目に入ってくる。

ちなみに今、彼は赤点仲間を他に探しているみたいだ。



「・・・・・・まぁ、赤点テストの勉強はしなくていいみたいだし、まぁいっか。」

「どんまい」

「うん」



それで小豆との会話は終了した。
隣を見れば明日提出の理科の問題集がまだ終わっていなかったようで小豆は問題を黙々と解いていた