02

・・・・・・・時の流れってこんなにも早かっただろうかちきしょう。



「なまえー!早くーっ」

「・・・・・・・・うん」


気が付けばもう補習当日。
嫌な予感はしていたが、やはり紅葉は一緒に回るグループに私を入れるみたいだ。
まぁ確かに紅葉とは所謂幼なじみだし、原ちん(中原)とはまぁまぁ話すからこうなるのは当たり前だ。仕方ないだろう。・・・あまり納得できないけど。


「なまえも昔から歴史苦手だったよねー?」

「あー、うん」


正直、紅葉の言葉があまり頭に入ってこない。よくわからないがどうやら六合を探しているらしい。しかし、今の私の頭の中は、どうやったら抜け出せるか、だ。
人混みに流されて無理矢理はぐれてもきっと紅葉達は心配して私を探すだろうし、かと言って今更単独行動をしたい、と場の空気を汚す事なんかできない。・・・どうしたものか。
・・・・いや、先に言って置くが別に二人が嫌いな訳ではない。
ただ単純に私は酔いやすい。それ故に人混みが苦手だ。だから、私は出来るなら人が少ない場所で突っ立っていたいのだ。

・・・・・紅葉達は私がよく道に迷ったりする事を知っている。だから今此処に一緒に居てくれているのだろう、そうふと考えていた時、強く圧された。人混みに。



「っ、わ」


あ、やばい。紅葉と、原ちんがどんどん遠ざかって、く


「、っちょ、まっ・・こんっの、」

糞がこのバスケ部めと目の前にいる隣のクラスの、・・・名前はよく知らないが中学が一緒でバスケ部だった二人組を睨む、が気づいていない。
どうやら彼らの視界に私は入っていないようだ。

・・・・・・・畜生、いっその事思いっきり蹴ってやろうか!身長デカイからって調子乗んじゃねぇぞツンツン頭が!


「、お、すっなっ!」


ガヤガヤと五月蝿いせいで聞こえてない。いや、気づけ頼むから。このままだと潰れてしまう。いや、なんかもう顔がすでに押し潰されているが、このままだと・・・死ぬ、切実に。そう思った時だった



「ぅ、わ!?」



ぐい、と左腕を引っ張られたので、何だと無意識にそちらを見た。



「・・・・・・・・・へ、」



誰だと顔を見れば、つい間抜けな声が出る



「大丈夫か?」



しっている、この男を。噂話に疎い私でも知っていた男。


「・・・・うん、大丈、夫。・・・ありがと、助かった。」

「おう」


篠ノ女 紺。
頭がめっちゃいい。だけど喧嘩っ早い奴で停学になった事がある。私が知ってるんだからそこそこ有名なのだろう。・・・ていうか、同じクラスだし。



「みょうじ?」

「・・・・・・!六合、」


見覚えのある声、所謂不良な篠ノ女紺の後ろに居たのは昔から知ってる男だった。
相変わらず社交的すぎる。


「大丈夫?・・・・なんか、流されてたみたいだけど」

「うん、平気。あ、紅葉達が六合のことを探してた」

「え、ホント?教えてくれてありがとう」

「・・・・・うん」



・・・・・一体、何なんだい篠ノ女くんよ。



「・・・・・・・・」

「・・・・・・・、えーと篠ノ女くん?」



・・・・・・先程から篠ノ女紺からめちゃくちゃ視線を感じていたのだが・・・、ここまで意味もなく見つめられるとさすがに居た堪れない。



「・・・何?なんか付いてる?」

「・・・・・・アンタ、みょうじなまえ、だよな?」

「・・・・・?まぁ、そうだけど。」



それを聞けば目の前の男は少し表情が変わった。



「あー、まぁ確かに・・・・・・」

「は?何?いきなり」


今度はガン見ですか。一体何なんだコイツは・・・・・・・、



「ちょ、鴇!なまえ!何やってんのよこっち来なさい!」

「!」


紅葉、ナイスタイミング。


「あ、紅葉。
いやちょっと豆知識をね」


あの人にね、と六合が去っていく篠ノ女君に指を指す



「は!?」

「六合君、あの人が誰だか知らないの?」



・・・・いやはや、彼らしい。
周りの人の気持ちに敏感で、分け隔てなく接する。だけど、実際は挨拶程度で人に深くのめり込もうとはしない。

昔から、そうだった。




(───そう、だから私は離れた。)