あれからお互いにお風呂に入り終わり、テレビを見てロナルドさんの寝床の話になった。
兄の部屋は今カオスなので明日私が片付けるとして、お客様なので私のベッドを貸すことになったのだが、
「いやいやいや俺がソファー使うから」
「何言ってんですか、お客様なんですから、ソファーで寝かせる訳にはいきませんって。
ほらほら早く!」
「ちょ、いやっま、力強ぉおおお!!」
「どこでなまえちゃんは寝るの?」と言われたので正直に言えばチャラくともやっぱりロナルドさんは英国紳士だったみたいでそれを先程から頑なに首を縦に振ってくれない。こうなったらお得意の力技の見せ所。
「・・・よ、いっ、しょっ!」
「ぐえっ」
ベッドに運んで、この部屋から出たら駄目ですからねと手を鳴らして忠告をすれば押し黙った。
「じゃあ、おやすみなさい」
「お、おやすみ・・・・・」
うん、これで寝れる。明日はまず兄ちゃんのシーツを洗わなきゃ。
・・・・・・あ、アニメ予約しとかなきゃだな。
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「・・・・・・・・・・・は?」
目を覚ましたら、自分はベッドにいた。
「・・・・、・・・・・」
全部、長い夢だったとか?・・・・・いやいやリアルすぎだ。違う違う
「・・・・・・まさか」
急いでリビングへ走りドアを勢いよく開けるとうわあっと間抜けな声が耳に入った。目に入ったのは、
「あ、おはよーなまえちゃん」
少し昨日より髪型が崩れた金髪の男。
「・・・・・・な、」
頭が、くらりと目眩がした気がした。
「?どうしたの、」
「な、何やってんですかあああああ!!!!」
付け足すなら、裸の金髪の男だった。
・・・・・・下は、ソファーで隠れてるからどうなってるかわからないけど。
「昨日兄の服貸したでしょう!?いやてか着てたでしょう!!何で脱いでんですか!!馬鹿ですか!!」
「あー、ごめん。つい癖で」
「!?ちょっぎゃあああああ立たないでくださいこっち来ないで!!」
反射的に下を向けば大丈夫だよーと呑気な声が返ってくる。何が大丈夫なんだ何が!
「流石に人の家だし下は履いてるよ。おはようなまえちゃん」
近づく気配にビクつきながらも上を向けばすぐ近くにロナルドさんの顔。
「は、」
「なまえちゃんって思ったよりこーいうの意識しちゃうんだ?」
思ったよりも近い距離に後退ろうとする私の身体を片手で肩を押さえ、封じたかと思えば耳に息を吹きかけた。
「っ、うあっ」
「朝からかわいー声出しちゃって。」
「んなっ、なっ」
顔に熱が集まって、ロナルドさんの顔が見れない。上を向いたら・・・いや、ここは対抗して上を向くべきか・・・・・・
「こーいうの、初めてみたいだから教えてあげようか?」
───その言葉に、私の何かが切れた。
「・・・・・、・・・・な」
「なーに?もっと大きな声で言ってくんないと、」
「ざっけんなあああああああ!!!!!」
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「いったたー・・・・・」
「・・・・少し、やり過ぎました。ごめんなさい」
「いや、俺も調子乗りすぎた。ごめんね?」
「・・・・・・、・・・・・」
罪悪感が、のし掛かる。そもそも、ロナルドさんも悪いけど、私にとってあの言葉はあの人と重なってそれで私は反射的にロナルドさんに技を掛けてしまった訳で。
「こーいうの、初めてみたいだから教えてあげようか? 」
・・・・・・・あぁ、駄目だ。あれは、もう終わったことなのに。
(重い、鉛みたいだ。)