明日は肝試しだな、なんて放課後、下駄箱の近くではるちゃんと話していたら筆箱を忘れたことに気がつき、すぐ戻ると言ってはるちゃんを下駄箱に置いて私は急いで教室へと向かった。
(・・・・・・・・・うわぁ)
向かった、のだが入れない。
「・・・っ離せよ!」
「嫌、友人帳、寄越せ、寄越せ」
夏目くんと、妖怪が教室で言い争っている。・・・友人帳ってそんなに珍しい、価値のあるものなのかな?・・・ていうか、この状況どうしよう。私も加勢して妖怪から夏目くんを引っぺがえすべき?でもなんだか・・・うん、すごく緊張するなぁ。うわぁ何コレ。変なの。ドキドキと、何だろう不安と助けなきゃって気持ちと・・・期待?
・・・・でも、とにかく彼を私は助けたい。昔とは、違う。だって、ちゃんと、見えてるんだ。
「・・・・夏目くんを、離し、てっ」
「!?」
「ぎゃっ」
「、早くっ逃げよう!」
「、!」
目の前の一つ目の妖怪を蹴り上げて彼の手を引けばとても驚いた顔をしていて、なんだか昔と反対だななんて笑みが零れた。
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「・・・・ごめんね?大丈夫?」
「あぁ、・・・だ、いじょうぶ、だ。」
どうやら夏目くんは見た目通り体力はあまりないみたいだ。まぁ私は中学の時部活で走ってたりしたからその差があるのかもしれないけど。
「っみょうじ、」
「・・・・・何?」
「みょうじは、」
夏目くんの瞳は不安そうで、何か悩んでいるような、そんな瞳をしていた。何で、そんな顔してるのだろうかと一瞬思ったが、当たり前だ。私も、きっと夏目くんと同じ立場だったら不安になる。この人も見えるのだろうか、でももし何かの間違いだったらどうしようかとか、でも知りたいなとか。
・・・・私から、言った方がいいのかもしれない。
「あっいた!どこいってたんだよー」
「!はる、ちゃん」
ごくりと唾を飲み込んでいざ言おうと思ったら、思わぬ障害が飛び込んできた。どうやらはるちゃんは私が遅かったので教室を見に行けば案の定誰も居なかったらしく、私を探しに来てくれたらしい。
「・・・・・・・・お前ら、どうした?」
「、な、んでもないよ?あ、夏目くんバイバイまた明日!」
「うおっ、おい、みょうじ?」
はるちゃんの腕を引っ張って私は階段へと向かった。
夏目くんの顔は、見れなかった。
(いつか、話せる日が来るのかな、なんて)
(期待している自分がいた。)