「いやー、もうすぐ夏休みですなー」
「・・・・・・そうですな」
「あといくつ寝ればいいんだろーなー」
「ねぇ、あと一週間寝たら肝試しだよ」
「・・・・・あー、あと15日間かー」
「夏休みの前に肝試しがあるね」
「・・・・みょうじ、誘えそうなのいない?」
「それ、もう五回目だけど答えは相変わらずですごめんね?」
「・・・・・・・ぐーあー・・・・どうしよ人数集まんねー・・・・・」

とうとうはるちゃんが現実逃避をし始めた。これは相当悩んでいる。
実行委員のリーダーとしてくじで選ばれてしまった彼はもともと責任感が強いと言うこともあって人数を集めにすごく力を入れていた。
だがやはりなかなか難しいみたいで、はるちゃんは頭を抱えて今隣で唸っている。

「んー・・・、まぁ、他のクラスもいるし、はるちゃんがそんな責任を感じることないよ。
リーダーになったのだってたまったまくじで引いちゃっただけだし。ね?」
「いや、でもさぁ・・・・・、
それってだからこそなんか申し訳なくね?多数決で皆が決めて納得してなら期待ハズレ、で終わるじゃん?」
「・・・・まぁ、たしかにそれは皆にも責任あるからね」
「だけどさ、そういうのじゃなくてくじでリーダーになった訳で、他にちゃんと仕事できる奴はいたと思うんだ。」
「・・・・・・」
「きっと司会がくじで決めたけど立候補する奴いたと思うんだよなー・・・・。」
「うーん・・・・・」

やっぱり相変わらず自分に厳しいというか、優しすぎるというか。いつも思うけどそんなんじゃいつか酷い目に合っちゃうぞ。
だってきっと、そのくじは───・・・


「夏目、頼むよ。二十名以上参加じゃないと許可おりないんだ」

ふと、北本くんと西村くんが夏目くんを丁度誘っているのが耳に入った。もちろん、それは私だけではなく。

「・・・・・・・・ハッ!そうか、夏目が残ってた!」
「!?え、ええー・・・・・、
な、夏目くんはそういうのあまり好きじゃ、ないんじゃない・・・かな・・?」

コソコソと私達は影で見守りながら話す。・・・・多分、断ると思うけど。

「悪いけど、おれはパスだ」
「なんだ、用事かー?」

うん。だよね。そりゃそうだ。
夏目くんや私みたいなのは理由がない限り肝試しなんて参加しないって。
・・・・・ていうかはるちゃん落ち込み方わかりやすすぎ。


「夏目くん、参加して」

「「・・・・・・・・え」」

つい、はるちゃんと声がハモった。そして二人で見合い、コクリと二人で頷いたら、私達は彼等に歩み寄る。

「頭数足りないって頼んでるのにちょっと付き合い悪くない?
それとも何か大事な用事でもあるの?」
「・・・・・あー、のさ、純、夏目くんにもきっと色々あるし、ねっ!」
「そっ、そうそう!第一自由参加なんだから、なっ!」

空気が固まった気がして、だから私達は咄嗟に無理矢理だが、紛らすように夏目くんと純に話し掛けた。
はるちゃんはわからない、と言った顔をしていて、だけど、きっと私も同じ顔をしているんだろう。
「・・・・・・純、ねっ?だから・・・、」
「でも・・・・・・」

────彼女の様子がおかしい。

「あっひょっとして夏目お化けが怖いのか!?
可愛いとこあるじゃないか」
「、え・・・」
「そっかそっか大丈夫俺らがついてるって!」
「・・・、・・・・・えぇー・・・と、ちょっ、待ちなって」
「・・・・・・な、夏目!無理しなくても、」
「よし、夏目参加な、これで参加者20名!!一週間後、7時に旧校舎前な!」
「おいっ」
「西村達、夏目に・・・・・」


─────キーンコーンカーンコーン


「「・・・・・・・・・・・・・・」」

チャイムがなるのと同時に私とはるちゃんは項垂れるように頭を抱えた。



(教室のクーラーがいつもより寒い気がした)


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