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「でね、これが去年もらったパソコンなんだ!今年も新しいのを買ってもらうんだ!」
「へー、すごいねぇ」
あぁ、いい加減流すのすら疲れてきた。
いや、まぁこの子のお家に来たら自慢話を聞かされるとわかってはいたけれども。・・・もう、5時かそろそろ帰っていい時間だろう。
「私、そろそろ帰るね」
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「それじゃあ、また来てね!」
「・・・うん!また暇な時にでも!」
バイバイ、と手を振れば私はその場からすぐに去った。
やった、やっとあの家から逃れられる、そう思えば足取りがなんだか軽くなってきた。あぁ、早く読みかけのあの、ミステリー小説が読みたい。
「なまえ!」
「おぅわ!」
いきなり、後ろからガシッと捕まれた、名前を呼ばれて、つい間抜けな声を出してしまった。誰だと後ろを振り向けば、
「は、ハリー!?」
「ご、ごめん、びっくりさせちゃって」
「え、あっいや、だ、大丈夫・・だけど・・・・・、」
ホッと目の前の彼は安心したかと思えばハイ、と私に何かを渡した
「これ、なまえの?」
「・・・・・あ!」
渡されたのは私が気に入っているストラップだった。
もしかして、パシられたのだろうか?だったら申し訳ない。
「ありがとう、ハリー」
「よかった」
ニコリと笑う彼は、やはり痩せてはいるが顔つきは整っているからイケメンに入るのだろう。
影で人気があるのを本人はきっと気づいていないんだろうな。
「それじゃあ、バイバイ。」
「うん!あ、ダドリーの誕生日、・・・・・頑張ってね、色々と」
「うん、ありがとう、」
力無くハリーは笑うと家路へと帰って行った。前に一年に一度の最悪な日だ、とハリーは愚痴を零していたが、明日がその最悪な日なのだ。
・・・・・・・あぁ、同情する。本当に不憫だ。どうにかしてやりたい。でも、私の家に預けるなんて知ったらダドリーが怒る。それでハリーに被害が出たら困る。そんなん絶対駄目だ。
────それに、
「・・・・・・、」
あぁ、知ってるさ。
最低だって事ぐらい、十分知ってるしわかっている。私はそういう人間だ。仕方ないじゃないか。
(変わってしまうのは、怖い)
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