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「、っは、」
何て、殺気。あれを恐怖と呼ばず何と言う?こんなにも怖いと感じたのはすごく久しぶりかもしれない。
〈まぁ、いったいどこに行っていたの?〉
「何でも、ないよ!マダム!
豚の鼻、豚の鼻」
あれは、番犬にしちゃあ、危険すぎる。いや、犬じゃない。あれはどっちかっていうとグリムに近い。・・・下か上に、何かあるのだろうか?あの時は、気が動転していたし、暗がりでよく見えなかった。だけど、部屋はなかったから隠すとしたら天井か地下だろう。あんな番犬を置いておくだなんて、よっぽど大切なモノだ。
「・・・・・・」
それかもしかしたら、厳重にしなければならない程の危険なモノなのかもしれない。あるいはどっちも、か。
「・・・・・・・・・!」
────あぁ、そうか。石だ。
「何であんなものが!?世の中に運動不足の犬がいるとしたら、まさにあの犬だね!」
「どこに目をつけているの!?見なかったの?あの犬が何の上に立っていたのか!」
「何言ってんだ!足なんか見る暇なかっただろ!?」
負けじとロンはハーマイオニーに応戦したがそれはある意味自分はわからなかったと墓穴を掘っているようなものだろう。
「仕掛け扉よ!あの犬の下には仕掛け扉があったわ。」
そんなものがあったのか。全然わからなかった。いやはや流石というか何というか・・・・・
「貴方達、さぞかしご満足でしょうよ。もしかしたらみんな殺されてたかもしれないのに!もっと悪いことに、退学になったかもしれないのよ」
彼女は二人を睨みつけながら、最後に「おさしつかえなければ、休ませて頂くわ」と吐き捨てるように言えば、部屋へとずんずん進んでいった。
「えっ、ハーマイオニー!?」
呼び止めたのだが気づいていないのかそのまま彼女は行ってしまった。そんな彼女にロンは死ぬことよりも退学が怖いのかよ、と呆れるように呟いた。・・・・・・たしかにその意見に否定はできない。
「・・・・・えー、っと・・・、
あの、ごめん、・・・ありがとう。」
「あ、いや、・・・・むしろ、巻き込んでごめん。」
何を言おうか悩んだ結果、取り敢えず謝罪と感謝の言葉を伝えれば、彼は遠慮がちに繋ぎっぱなしの手を離して私に謝った。
お互いにあまりにも急いでいて気が動転していたのですっかり手を放すのを忘れていた。
「道、わからなかったから助かったよ。・・・・・それじゃ、」
「あ、・・・・、おやすみ、」
「じゃあね。おやすみ」
「うん、二人ともおやすみ。」
バイバイ、と軽く手を振って私も彼女と同じように女子部屋へと向かった。
手は、まだ少しだけ、暖かかった。
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「・・・・・・・ハーマイオニー・・・?まだ、起きてる?」
「起きてるわ。おかえりなさい。・・・・・・ったくもう!あの人達は本当に勝手よね!」
「・・・・・・ねぇ、どうして貴方を含めた三人はこんな夜中にあんな所にいた訳?」
「それは──・・・」
経緯を聞いて、彼女の長所でもあり短所でもある「おせっかい」に呆れて少し溜息をついた。
「・・・・、・・・・・それは、たしかに、まぁ寮の点数が下がるのは・・・・・・・でも、そんなに点数って大事な事?」
私がそう問えば、彼女は目をカッと見開き、息継ぎもしないで言い放った。
「何言ってるの!パーシーがどれほど頑張ってるのか知らないの!?」
「え?いや、まぁ・・・、」
「現に入学当初と比べたら白髪が増えたわ!大体、今日もこんな危険な目にあって・・・・!あの人達、いつか退学の前に存在そのものが亡くなってしまうわよ!」
「そっか・・・そうだね。」
やっぱり、彼女はお節介かもしれないけど、優しい。
呆れる程に、やさしくて、不器用だ。
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