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「・・・・・・・・ねぇ、」
「何?」
「私、聞きたいことがあったの」

図書館へ向かう途中、ハーマイオニーが立ち止まったので私も立ち止まった。周りに人はいないのを確認しているあたり、何か大事な話なのだろう。



「貴方、何でハリーを避けているの?」



───ドクン、と身体全体が鳴り響いた気がした。

いつか、聞かれるだろうとは思っていた。
過ごした日々は少ないが結構彼女は勉強だけではなく人の気持ちにも聡い。敏感なのだ。

あぁ、とうとう聞かれてしまった。

そう理解すれば何だか無償に泣きそうになってしまった。
頭はぐちゃぐちゃで、ただひたすらに何を答えればいいのかと必死に考えているのに思いつかない。


「・・・・・貴方と、彼は、友人なの?」


───目頭が、熱くなる。


「───わ、からない」


いつのまに、こんなにも泣き虫になっていたのか。
情けない。なんて情けない。
何で泣きそうになってるのか今わかった。

自分の事で泣いているのだ。


自分のエゴを押し付けて、おまけに自分が最低だとわかっていて、だからそれから避けようとしている。だけどそれができないから私は癇癪を起こしている。


───要するに、そういうこと。
どんだけガキなの。
精神年齢はとっくのとうに二十歳後半だというのに。
恥ずかしい。私は何も成長できてない。あの頃のまんま、止まっている。

人間として、恥ずかしい。


「ごめ、んなさい」


───何に対して私は謝っているの?


「私は、答えられない、」
「・・・・・・・何故?」


彼女の顔を、質問されてから見れない。
まるで母親に悪さを見つかって叱られている子供のようだ。


「今は、答えられない」
「今?」
「・・・・・・うん」


その時、彼女の顔をやっと私は見た。
彼女は真剣で、その真剣な瞳に吸い込まれそうになる。


────だから、私は今決めたかもしれない。



「私、一年生の終わりに言う。
必ず、貴方にも、彼にも、言う。」
「!どうして・・・・彼にも?」
「うん。嫌われても、言う。貴方達に、私は伝えないといけない。」


全てが終わったらなんて都合が良すぎる。だが、あやふやな記憶を押し付けてミスが生じるよりはマシだと思う。
そして、友達だと思ってくれてる彼等に私の犯した過ちを伝えなければ。

ずっと、嘘をついてまでして友達になんてなりたくない。
私は逃げたくない。ここで逃げたら一生後悔する気がする。


たとえ、もう話せなくなっても。


「────嫌よ」
「・・・・・ごめん。だけど、」
「嫌。絶対嫌。」
「・・・・・、ハーマイ・・」
「彼より後は嫌。」
「・・・・・・え?」


下を向いていた彼女の顔が上がった。彼女の表情は、ぎこちないような、そんな表情だった。
頭に疑問符が浮かびあがっている。・・・何故?
そうしたら、顔に出ていたのか、遠慮がちに彼女は言った。


「・・・・・正直、貴方とハリーの方が関係は深いに決まってる。だけど、聞いたのは、私が先でしょう?彼から何か聞かれた?」
「・・・・・・・ううん、」
「じゃあ早い者勝ちよ」


腕を組んでそう言う彼女についポカーンと口を開けて見てしまった。


「・・・・・・・・何?」
「・・・・・・いや、・・・・」
「・・・・・・さすがに自分勝手だと思ってるわ。だけど彼にはなんだか負けたくないっていうか、チラチラチラチラそんなに見るぐらいなら早く聞けばいいのに規則は破るし・・」
「・・・・・・ぷっく、く・・・」
「!」
「・・っ、ごめ、・・・・・ふっ、・・ははは・・・!」
「っ、と、とにかく!どんな理由でも私は一番最初に聞きたいわ!その、私に伝えなくちゃいけないって事を!
・・・・・だから、あの、」
「いいよ」
「!」
「本音を言うと、きっと貴方にそう言われなかったら私は最初にハリーに言ってた。
・・・・だけど、よく考えたら順番なんて関係なかった。」
「・・・・・そうなの?本当に?無理してない?」
「無理してるって言ったら引き下がるの?」
「・・・・・・・・それは」
「大丈夫。本心だから。ハリーに最初に伝えようとしたのは一番期間が長いから。」
「・・・・・・・」
「言っとくけど、友達とかの期間の問題じゃないわ。
・・・・まぁ、友達なのに黙り続けてた期間って所かな」
「嘘、って事?」
「・・・・・かなり、近い、かも」
「・・・・・・わかったわ。」
「・・・・・避けようとか、思わないの?」
「理由をきいてないもの」
「・・・そう、」


その後は、図書館に向かって、彼女はいつも通り。私に勉強を教えてくれた。

何の、変わりもなかったから、それに私は甘えてしまった。


「・・・・・・・・」


彼女の優しさに甘える自分は、やっぱり卑怯で狡いと思った。

だけど、たとえどんなに狡いと言われても、卑怯だと言われても。
まだ、私は言えない。

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