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「・・・・・・・・、」


部屋に着いた途端、私はベッドにダイブした。
身体がベッドに吸い付くような感覚が酷く心を落ちつかす。


「・・・・・・寝るの?」
「・・・・・・うん、おや、すみ・・・」


シャワーは明日浴びればいいや、そう思えば、遠退いていく意識。

「待ちなさい!着替えてから寝なさい」


・・・・・が、先程お互いに自己紹介しあったルームメイト、ハーマイオニー・グレンジャーに着替えて寝ないとシワになっちゃうわよと叩き起こされた。


「・・・・服・・、」


あぁ、もう考えたくない。
こんな所、本当は行きたくなかったのに。お家に帰りたい。
だけど、それは無理な相談だし、そんなこと、してはいけない。

だって、もし、自分から退学になったとして、ジャンや義母にどんな面を出せばいい。絶対一族に噂は広まる筈だ。考えただけで、罪悪感と不安で、胸が苦しくなる。
ジャンなんかきっとそうか、と言って普通に私を迎えそうだ。簡単に許してくれそうで、それが一番怖い。


いつだって最初に私を受け入れてくれたのはジャンだったから。
たまにうざい軽口を叩いてからかってきたりするけど、やっぱりジャンはたまにすごく優しいから泣きそうになる。
優しいから、いつも頼ってしまうのだ。


「・・・・・・、寝る」
「じゃあ、おやすみなさい」
「うん、おやすみ・・・・、なんか、ありがとね」


もうこれからの事なんて何も考えたくないけど、考えなきゃいけないんだ。決めなきゃならない。


明日から、始まるのだから。


はぁ、と溜息を心の中でつけば、目を瞑った。
・・・・・・さて、どうしようか。
やっぱり、何も知らない振りをして、一年を過ごす?



「・・・・・・・、・・・・」


───ふいに、ズキンといきなり胸が痛くなって、苦しくなった。
理由はわかっている。心が強く否定をしているからだ。

だってそれは、何も、しないということ。
つまり、彼が、傷つくのを見届けるということ。


───それだけは、それは、嫌だ。・・・・いや、無理、だ。


最後まで、傍観する自信がない。
だってそんな事したら、
私は、彼を本当に二度と友達と呼べなくなってしまう。
まぁ今もこんな状態だし、友達なんて呼べないが。
・・・でも、呼べないが、彼は私を友達だと思ってくれているのだ。

結局は、繋ぎ留めておきたいんだ。


友達でいたい。たとえ、上辺だとしても、ハリーが思ってくれているのなら。
ハリーとの、上辺の友達と言う関係を、自分は保っていたい。

最低だなんて、知ってる。


・・・・でも、それで、未来が何らかの形で変わってしまったら?
大体異世界の者?何だそれは。何であの帽子は知っていた?私はモブキャラ、そこら辺の小さな存在な筈なのに。



「・・・・・・・、・・・・」



怖い。怖いんだ。未来が変わることも怖いけど、私は、


彼が、死ぬことが、
今、怖くて、怖くて、堪らない。


───彼は、物語では最後どうなる?

知らない。私は知らないんだ。


・・・・たしか、うろ覚えなのだが、たしか彼の周りを取り巻く数人がたしか居なくなるんじゃなかったか?
優しい彼の事だから、きっと自分を責めてしまうかもしれない。


───あぁ、怖い。


知らないことが、こんなにも、怖い。
要は、『友達』を止めればいい話なのだが、どうやらできないみたいだ。



「・・・・・・・・眠い、な」



さっきよりもズキリと痛みがわかりやすく増したから、ごまかすように小さく呟いた。

あぁ、もう目頭が熱い。もう今日は寝てしまえ。これ以上考えたら、泣いてしまう。



「・・・・・・・・・、っ・・」


瞼を閉じて、私は明日に備えることにした。



(そのまま、全てを塞ぎこむように。)

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