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「なまえ!」
「メア・・・・」


先程、ドラコが起こしたちょっとした騒ぎで私に気が付いたらしいメアが人の波を押しのけて、私の元に来てくれた。


「大丈夫?かなり隣のデコリ・・・マルフォイの事嫌がってたみたいだけど」
「デコリンって言いかけたよね。
・・・・・・ちょっと、関わりたくないんだ。うん。ドラコは嫌いじゃないんだけどね。」


むしろ、私よりメアがマルフォイのこと嫌がっているんじゃなかろうか


「そう、私は嫌いだわ。あんなヘタレ貴族・・・・
・・・・・そういえば、貴方ハリーと知り合いだったの?」


・・・・・メアとドラコは知り合いなのだろうか?少なくとも、仲はあまり良くないのだろう。今度聞いてみようか


「・・・・うーん、まぁ、あっちの学校では同じクラスで、そこそこ仲良かったんだ」
「そうなの?すごい偶然ね!
貴方、マグルの学校に通ってたの?」
「うん。家から近かったから」


そんなたわいもない事を話していると、マクゴナガル先生が戻ってきて、「静かに!」と言い放ち、ざわざわした話し声が一斉に止んだ。


「まもなく、全校列席の前で組分けの儀式が始まります。身なりはもう整えましたね?

さぁ、行きますよ」


一列になって、と指示があったので皆ぞろぞろと動き出す。
今度は逸れないようにとメアがしっかり私の手を握る。

少し自分の精神年齢を疑うが、まぁいい。それよりも、今は組分けの方が気になる。


「・・・・・・すごいわね。」
「・・・・綺麗だねー」


大広間に入れば、皆騒ぎ出す。
沢山の蝋燭が空中に浮かび、四つの長テーブルを照らしている。
上をふと見上げれば、夜空に散りばめられた星がきらきらと輝いていた。


「どこに入るのかしら・・・・」
「・・・・もう考えたくない」
「今から決めるのよ。
・・・・まぁ、考えてたって緊張するだけね。」


そんな事をメアと話しているとふわふわの髪を持つ女の子が、この空は魔法がかけられていて、「ホグワーツの歴史」に書いてあったと高々に隣のおどおどした男の子に教えているのが目に映った。
・・・・・・多分、あれはメインキャラではなかろうか?
たしか、ハリーとロンと、もう一人女の子がいた筈だ。


「・・・・・・・たしかに可愛い。」
「?
ごめん、何か言った?よく聞き取れなかった。」
「、!あ、何でもないっ」


昔、ハリポタ好きの友達が、彼女を可愛い可愛いと騒いでいたのを思い出し、つい、ボーッとしていた為、口から出てしまった。あはは、と笑ってごまかせば、メアは首を傾げたが、どうやら一人言と認識してくれたみたいだ。・・・・・言動には気をつけよう。


「あ」
「え?」


次の瞬間、ざわめていたこの空間が一気に静かになった。
今はただ、椅子に置いてある黒いボロボロのとんがり帽子に、皆釘付けである。


「!」


そして、帽子が、動き出す。



私はきれいじゃないけれど

人は見かけによらぬもの

私をしのぐ賢い帽子

あるなら私は身を引こう

山高帽子は真っ黒だ

シルクハットはすらりと高い

私はホグワーツ組分け帽子

私は彼らの上をいく

君の頭に隠れたものを

組分け帽子はお見通し

かぶれば君に教えよう

君が行くべき寮の名を



グリフィンドールに行くならば
勇気ある者が住まう寮
勇猛果敢な騎士道で
他とは違うグリフィンドール

ハッフルパフに行くならば
君は正しく忠実で忍耐強く真実で
苦労を苦労と思わない

古き賢きレイブンクロー
君に意欲があるならば
機知と学びの友人を
ここで必ず得るだろう

スリザリンではもしかして
君はまことの友を得る
どんな手段を使っても
目的遂げる狡猾さ



かぶってごらん!恐れずに!

興奮せずに、お任せを!


君を私の手にゆだね(私は手なんかないけれど)

だって私は考える帽子!




歌は響き渡り、次に響くのは広間にいた全員の拍手。


「・・・・・・・・・・」


・・・・・うん。どうしよう、どれにも当てはまらない。・・・・強いて言うならレイブンクローかな・・・、成績はまぁ良かったし・・・ちなみに、高校生が小学生の問題をスラスラ解けて当たり前、と思うかもしれないが、そういう意味で考えている訳ではない。私はこの世界に来る前の事を言っているのだ。私は、前の世界では母に無理はさせたくなかったので勉強はそれなりに頑張っていた。だから、学年順位は上位者だったし、クラス順位はいつも1位をなんとか採っていた。私はある意味真面目ちゃんだったのだ。・・・・・スリザリンと、グリフィンドールには入りたくない、なぁ。


「・・・・・・、・・・・」


スリザリンにはドラコがいるし、グリフィンドールにはそれこそ主要キャラが沢山いる。
だから、なんとかしてこの二つの寮だけは凄く避けたい。・・・・まぁ多分性格上、ハッフルパフかレイブンクローだろうと私は信じている。いや、というか信じなきゃやってらんない。



************


「パークス・サリー・アン」


こんなにも緊張しすぎて胃が苦しくなるなんて、久しぶりだ。
本当にバクバクキリキリ痛い。もうチキンとか言われてもいい。そうだもんチキンだもん開き直ってやる・・・・・・


「ポッター・ハリー!」

「!」


跳びはねた。

バクバクドクドク煩い私の心臓が、ドクンッ!と音を立てて、これでもかと言うぐらい跳ねた。
結末は知っているのに、そう思い、何故なのかと不思議でならない。とくに気にする必要は、意味は、ない筈なのに。


「・・・・・・・・・・」


彼が呼ばれる事によって、辺りはざわざわとしていたが、彼が帽子を被る事によってそれは鎮まった。

それに反して、私の心臓はとてつもなく五月蝿い。


「・・・・・・、・・・・・」


長い、長い。

早く、早く。


それか、どうか治まれ黙れ私の心臓。



「グリフィンドール!」



ワッと歓声が上がると同時に、肩の力が降りる。迫ってくるのは安堵感。このままヘナヘナと地べたに座り込んでしまいそうだ。それほどまでに緊張していたのかと苦笑と嘲笑が混ぜ返す。


「・・・・・・、・・・・」


ただ今分かるのは、グリフィンドールに彼が選ばれた事と、

とても不安そうだった彼の顔が、今はとても嬉しそうで、幸せそうで、

なんだか、それが酷くとても安心できるものだったと言う事ぐらいだ。



(───彼の笑顔に、

何故だか、酷く救われた気がしたんだ。)


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