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「・・・・・・・・・・なまえ?」
「ん?」
「なんかあったの?」
「・・・・・・・、わぁお。」
すごい、流石セド。
「・・・・・・うーん、私ってそんなわかりやすいのかね」
「んー・・・まぁ、長いこと君と仲良くしてるし、僕達一応親友だからね。」
わかって当然、そう言って笑う彼に少し笑みが零れた。
「そっかぁ・・・・・・・」
夏休みの間、あれからダドリーの家にもう一回行った。
だが、ハリーに「バーノン叔父さんが怪しむからもう来ちゃ駄目」と強く言われてしまい、結局全然行けなかったのだ。・・・ぶっちゃけ、無理矢理行けばよかったと後悔しているし不安でならない。
「・・・・・・大丈夫?」
「うん、ごめんね?」
「謝んなくていいよ」
只今私は後悔しつつセドリックに付き添って貰い、ダイアゴン横丁に入学用品を買いに来ている。
・・・・セドの笑顔、ホッとするな。・・・・せっかく私が迷うからついてきてくれたのに、セドリックに心配かけて、くよくよ悩んでいるなんて、迷惑、最悪だ。もう終わったことだ。後には引けないのに。・・・いや、悩んでるんじゃない、情けなくて、罪悪感いっぱいで、それで落ち込んで、セドリックに心配かけている。今の自分、すごく情けない。今はただこの物語、つまり、『世界』が私のせいで、何も変わっていないことと、ハリーの無事を祈り、信じるだけだろう。
「・・・・・おーい?」
「・・・・・・・・・・」
・・・・・・一緒にいるだけで、やはり冷静になれるというか、落ち着く。さすがというか、なんというか。これも彼の魅力の一つだろう。
セドリック本来の、素質。
セドはとても素敵な友人だ。良いところがたくさんあって、自分が彼の友人であることをなんだか奇跡、誇りに思うぐらい。
「・・・・・・おーい、なまえ?」
「っ、あー・・・・・、ご、ごめん。
・・・・・・わざわざセドに付き合って貰ってるのに、私、本当にごめんなさい。どうかしてた、」
「・・・いや、それは全然平気なんだ。
ただ、もし僕に力になれる事があったら言ってほしいな。」
「・・・・・・・・うん、」
「とにかく、無理はしちゃ駄目だからね?」
ニコリと優しく微笑む彼に、また安心するのを実感した。こういう時、ありがとうの他にも何か言えればいいんだけどな。もっと深い感謝の仕方ってなんだろう?
「・・・ありがとう、セド。」
「心配、かけさせてね。無理に笑わなくていいから」
「うん」
笑顔が眩しいなぁ、さすがだよ好青年。私にこんな友達がいるなんて、なんて幸せなんだろう。
「じゃあ、ローブは買ったから、教科書買う前に先に杖でも見に行くかい?」
「うん!」
***********
「あの・・・・・、」
「なかなか、なかなか難しい・・・」
え、あの噛み合ってない。ちょ、おじさん目ぇキラキラ、やめて、もうそんな期待に満ちたような、すみません私もう帰りたいです
「・・・・・、セド、ごめん・・・・・」
ボソッと遠い目で私は呟いた。セドリックには五回杖を振って試して無理だった時に、「あ、長くなりそう」と直感的に思ったので先に本屋に行ってもらった。
今頃きっと本屋でまだ待っていてくれているだろう彼に罪悪感が沸いて来る。・・・・それにしても、辺りを見渡せばそれはもう散らかり放題だ。
「、・・・ごめんなさい」
私が杖を振る度にどんどんそれは酷くなっていく。あぁぁ、もう早く終わって・・・!
「いえいえ、気にしないでください
・・・・・・ふむ、それでは、この杖はどうですかな?なかなか、珍しい組み合わせじゃ」
あぁ、もう本当にそんな目で見られるともう申し訳なくなってくる。
「椿の根と不死鳥の蹄、30cm」
渡された杖を、今度こそはと私は手に取った
「・・・・・・、!?」
──身体が、焼けるように熱い。
「、な」
──かと思えば、ふわりと何かが軽くなる。
熱は覚めて、むしろ暖かく、心地いい。
辺りをふと見渡せば先程散らかっていた物すべてが片付いていた。花がふわりふわりと雪のように辺りを舞っては消えゆく姿が映る。
「・・あの・・・、」
「・・・・・・不思議じゃ、
何とも・・・・、」
「・・・・、え、とそれは」
それは、一体どういう事なのか
・・・・・ていうかちょ、なんかこの台詞聞いた事ある。何やらデジャヴを感じる。
「わしは、売った杖を全部覚えている。」
「・・・・・・そうなんですか、」
そう言えば、何か考えたかと思えば私を真っ直ぐ見た。
「・・・・その杖に使われている蹄は、
貴方の両親を殺した、あの人の杖に使われている不死鳥じゃ。」
────一瞬、思考が止まった。
そして、次に感じたのは目眩と喪失感。
「・・・・そ、ですか」
もし、神様がいたのなら、そんなにも、私を巻き込みたいのだろうか?・・・・でもよく考えたらこれが、この不死鳥が────・・・
「、」
「!」
頭ではわかってはいる、が、
やはりまたもう一度、
あの人達の幸せそうな顔を見たいと思ってしまう。
「、ごめ、なさい」
「・・・・・・・いや、」
一緒に居た時間はそりゃ少なかったかもしれないが、あの人達は私に沢山の愛情をくれた。
それが、どれだけ私を救ったか。
私は、此処に居ていいんだと、
あの人達は、絶対何も知らないだろうけど、それでも私に教えてくれた事は事実。
救われたんだ。とても、とても。
大袈裟に聞こえるかもしれないが本当に、泣きそうなくらい嬉しかった。
そして私は、何度も、何度も、何十回、何百回と私は思い出し、
アルバムを見て追い掛けては、もう会えないのだと言う事実をまた認める、を繰り返し。
───でも、決して目からこれが零れることは無かったのに。
一度も、今まで無かったのに。
「・・・、・・あ」
瞳から零れ落ちるそれを、私はただひたすら押さえつけるように掬った。・・・あぁ、もう本当にここにセドリックが居なくてよかった。いや、でもこの泣き腫らした目はどうしよう?泣いた事がバレてしまう。
・・・・・・・・本当に、情けないなぁ。
***************
「・・・・・・・・・・どうしたの?」
「はは、ですよねー・・・・・・・、」
・・・・・約束通りに本屋に寄れば、視線痛い。ちょ、セドの視線痛い。
「・・・・・お、遅れてごめん。」
「・・・・・・・無理は、しちゃ駄目だって言ったんだけど」
「!い、いや、その事とは関係無い事なの。だから、大丈夫。」
「いや、大丈夫とは言えないんじゃない?目、腫れてるんだから」「いや、それはっ・・!?」
目をセドに触れられ、私は、口を自然と噤んだ。
「・・・・・・、いや、あの、セド?」「・・・・・・・・君は、たまに我慢しすぎて最終的に溜まっちゃったりする時があるから。小まめに発散しないと駄目だよ?」
「・・・・・・・・、りょ、かい」
・・・・・・いや、あのセドリックここ本屋だからね。ちょ、視線痛い痛い痛い痛い。美形に目を触れられるわ視線痛い私を羞恥心で殺す気か
「・・・・あ、じゃあ教科書買おうか」
「・・・・・う、ん。本当にごめんね」
・・・・私、謝ってばっかだなぁ。
(まるで、叱られて情けない子供みたい。)
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