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「・・・・・・・ねぇ、ダドリー?ハリーはどうして学校に来てないの?」


あの後彼に会ってない。何で?おかしい、そんなの。もう明日で夏休みなのに。ダドリーの誕生日が原因なのだろうか?
本当に、何があったのだろうか。不安がずっと付き纏っていて、堪えられずに私はダドリーに放課後聞いた。



「・・・・・・・・ダドリー?」
「あの糞野郎は罰を喰らってるんだ」
「・・・・・・・罰?」


どういう事だ、と問えばニヤニヤしながら教えてくれた。自分が蛇に襲われた、と大袈裟に。そして、


「・・・・・・・・も、のおき?」
「そうだよ、きっと今頃べそでも掻いているんじゃないかな」


ダドリーと、その周りの取り巻きが、笑う。ぎゃはぎゃはと、下品に笑う。


「・・・・・・・・」


──気が付けば、拳が震えていた。
必死に私は押さえ付けて、何故だかわからないけど、目頭辺りから込み上げてくる何かも、必死に抑えた。凄く、目の前のこの男を殴ってやりたいと思う。そんなの自己満足なんて事わかってる。だけど、だけど───、



「あ!なまえ、良かったらこの後家に寄らないかい?」


よくもまぁそんな状態で人が呼べるな、そんな言葉が喉まで出かかった。本当に、誰か、この男を黙らせてくれないだろうか?


「・・・・・・っ、」


でも、私がキレても、この男は反省しない。その親も、勿論。
だから私は、ただ頷くことしかできなかった。



**********


「・・・・・・・・、どこ、ハリー?」


あれから探しつづけて10分。ダドリー達はラジコンで遊んでいる。私はトイレと言って、実はハリー探し。早く見つけないと怪しまれてしまう。どうしたものか?
第一、外国って何でこうも色んな物がデカイんだ。まぁ、私の家もだがこの家はさらにデカイ。精神的にも体力的にも疲れた。


「・・・・・・・・、」


私は寄っ掛かって一つ溜息を零した。最初ポカトリックの家に来た時はトイレがどこかわからなくなってかなり焦ったなぁ。まぁポカトリック家は金持ちのボンボンらしいから当たり前っちゃ当たり前だが・・・・・・・・、


「・・・・・・・・、ハリー、出てこーい」


・・・・・まぁ、そんな犬猫みたいに出てくる訳が無いよね。知ってる知ってる。



「・・・・・・・・なまえ?」



──────声?



「っ!?!」


口から零れそうになった叫びをなんとか両手で押さえた。


そして、

私はできるだけ小さな声で、彼の名前をもう一度呼ぶ。



「・・・・・・・・・・ハリー?」
「あ、やっぱりなまえだ」


どうやら寄っ掛かった場所が物置きだったらしい。ドアの窓枠に、チラリと彼の姿が見えた。


「・・・・・・・ひ、さしぶり」
「久しぶり」


笑う姿が、痛々しくて、もう何でもっと早く気づいてあげられなかったのだとか、何で早く聞かなかったのだとか、色々駆け巡った。

「なまえ、何もしなくていいからね」
「!な、んでっ」
「なまえに迷惑は掛けたくないんだ。お願い。」


隙間から見える真剣な表情にまた苦しくなる。あぁ、もう何で、私がもっと、もっと大人だったら───、



「・・・・・、わかった。
・・・・・・・でも、カロリーメイトとかお菓子、あと飲み物持ってきたから食べて?お願い。」
「ありがとう、なまえ」


静かにドアをハリーは開け、私は飲み物やカロリーメイトなどを渡しせば、ハリーはドアを閉めて笑ってありがとうと言った。


「・・・・・明日も、ダドリーにお願いして、来るね。」
「いや、怪しまれそうだからいいよ
それに結構量もあるし、夜になればなんとか食料は調達できるし、足りるから大丈夫。」
「・・・そっ、か。ごめん、何も出来なくて」
「!、そんな事ないよ!」
「っ、」


私だけでなく、ハリーも声を荒げた為か、少し焦った。そして、また私を真っ直ぐに見つめてこう言った。


「いつも、僕は助けられてるよ」「、」


一瞬、言葉が詰まったが、ありがとうとなんとか呟いた。泣きそうに、なった。あまりにも貴方が真っ直ぐに見つめてくるから。


「・・・・・・・そ、っか」



この感情は、きっとただの同情に過ぎないのに。

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