「・・・・・・お?目ぇ覚めたか?」
「・・・・・・ふじ、もと・・さん、」

目が覚めると、懐かしいおじさんがいた。お久しぶりです、と起きたばかりのあまりよく働かない頭を無理に回転しながら目の前のおじさんに声を掛けると、「覚えてくれてたのか」と笑った。ニッと笑う姿は、奥村兄弟のお兄さんを少し連想させる。
少し反応が遅れながらもはいと答えると大丈夫か?燐が悪かったなと言いながら暖かいお茶をくれた。藤本さんは、あの頃から変わりない、優しい神父様なんだなぁ。

「・・・・?・・・・・あ!・・・、」

・・・・頭が、ようやく覚醒し始めてきた。鼻に、何か詰め込まれているような違和感を感じながら、私は最後に見た、驚いた二人の顔を思い出し、顔に熱が集まった。今私の顔は真っ赤だ。

「ほ、本当に、・・・・ご迷惑、お掛けしました・・・・」
「いやいや、気にすんな。それにしても菖蒲ちゃん、大きくなったなー!」

頭を撫でられて少しくすぐったいような気持ちになる。
あの頃の私は平均からしたらちっちゃくて、お母さんの後ろにいるような子供だったらしい。・・・・多分、それは当時私はこの世界の他人が怖かったからだ。しかも、そこそこ主要キャラクターであろう藤本さん。関わりたくなかったにちがいない。でも、何故かあまり記憶はないのだけれども、この優しくて安心する笑顔を私はちゃんと覚えている。

「それで、今日はどうしたんだ?」
「あ・・・・、あのっ奥村く・・・燐くんに、用があって・・・」
「・・・・・・喧嘩でも、したのか?」
「・・・・・・私が、燐くんを傷つけてしまったんです。だから、謝りたくて。」
「あー・・・・それでか・・・」

頭に手を当てて溜息をつく藤本さんにすみませんと謝るとそういう意味で言ったんじゃない、謝ることでもないと言われて私は首を傾げた。

「アイツ、さっき散歩だとか言ってどっか行っちまったんだよ」
「えっ」

あの馬鹿、と悪態をつく藤本さんに私は奥村くんはどこに行ったかわかりますかと問えばわからないと返され、私は少しだけ落ち込んだ。・・・・・避けられちゃった。

「・・・・・・・あの、今日はもう帰らせてもらいます。色々ありがとうございました」
「おう。あ、マスクいるか?鼻血隠す為に」
「・・・・・お願いします」

マスクを取りに行く藤本さんの後ろ姿を眺めながら、私はこれからどうするべきかを考える。
私、奥村くんに会わない方が良いのかな。・・・・いや多分高校に行ったら弟さんは勿論、お兄さんには多分塾で会ってしまうだろう。関わらざるを得ない。明日もまた来たら逃げちゃうのかな。奥村くんは、もう謝罪すら聞いてくれないのかな。・・・友達には、なれないのかな。
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