今日も、奥村くんは神社にいなかった。

「・・・・・・・、・・・・」

あの後教室に帰ると皆から心配された。何で?と聞くとだってあの奥村燐だからと言われた。
・・・・何で?何で、奥村くんは確かに怒った顔は怖いかもしれないけど、流石にそんなには怖くないよ。優しい男の子だよ。悪魔だとかそんなの知っていてもたまに忘れちゃうぐらい、ハーフでもやっぱり人間だよ。「奥村燐」は。


「・・・・・・・・あー・・・・」


いつもの定位置に座り、私は空を眺めた。今日は午前授業だったからまだお昼だ。青い空に雲が二つ。一つはよくわからない形だけど、もう一つはドーナツみたいな形。・・・・あぁ、お腹空いてきた。もし、ここに奥村くんがいて、それを言ったら笑うのかな。それで、いつもみたいにまた何か作ってきてやるよとか言ってくれたり、運が良かったら何かくれたりするんだろうなぁ。

「・・・・・・・」

奥村くんは、私を友達だと思ってくれてたのかな。・・・・もし、私が奥村くんの立場だったら、・・・・ああやって皆から怖がられてて、奥村くんの事を友達だと思ってたのに多分友達じゃないと言われたら、あまり想像できないけど何だか自惚れてたみたいで恥ずかしい。いや、それよりも、

「・・・・やっぱり、傷つけ、ちゃったんだ」

もし、私と同じように、仲良くなりたいって奥村くんが思ってくれていたとしたならば、ショックだったと・・・思う。・・・・・あれ、?


「・・・・・・・・、・・・・・っ」


・・・何で私泣いてるのかな。私じゃないでしょう。泣きたいのは。うわ、何だこれ止まんない。
・・・・・・奥村くんは、全然学校に来ていないのに、噂が一人歩きして勝手に「奥村燐」は危険だと認識されている。それっておかしいんじゃないかな。前の世界だったら流石に噂だけでこんなにも避けられるなんてない筈だ。この世界は、それ程に、奥村燐を孤立させたいのだろうか?それって、あんまりじゃないか。しかも、これから、魔神の息子という肩書きから彼はもっと辛い人生を歩んでいくのだろう。

あまり原作もアニメも見てないからわからないが、たしか、彼に仲間はいた気がする・・・その仲間、友達が彼を支えてくれれば、彼にとってこの世界が少しは優しいものへと変わるんじゃないかな。いや、絶対に、そうであってほしい。


「・・・・あやっ・・・まら、なくちゃ、」


私も、できたらその支えになりたいと思う。
あの日、彼が私を救ってくれたように、彼を救うことができたら。少しでも、彼が笑っていられるなら、その力になりたい。・・・・・・いや、きっとそんなまどろこっしいのが本音じゃないだろう。単純に、私は、彼と友達になりたいんだ。



**************


・・・・・来て、しまった。奥村くんの実家である、「南十字男子修道院」に。

「・・・・・・、・・・・・・」

チャイムを、鳴らすべきなのに、私もう何分も何もせずにここにいる。今更だけど、男子修道院に女子一人で行くのってすごい勇気がいる。・・・・ていうか、家に奥村くんがいるかわからないのに・・・弟さんならいるかもしれない、そしたら弟さんに頼んでお兄さんを明日にでも呼んでもらおうか。うん、そうだ。とにかく私はお兄さんの方に言わなくてはならないのだ。お友達になりましょうと。


「・・・・・・っ・・・・、」


ごくりと喉唾を飲み込んで私は一歩踏み出した。いざ、チャイム。


───ガチャン!!


「兄さん!」
「っだー!わーってるよ!」
「っぶ、あがっ!?」


ゴッと鈍い音と共に鼻に強烈な痛み。たらりと見えた赤い液体。
私が最後に見たのものは、


「高梨!?」
「えっ高梨さん!?」


赤い鼻血と私を見て驚く奥村兄弟。
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