「・・・・・・え?」
「だから菖蒲ちゃんが、悪魔に取り付かれないようにってそのお守りを渡したのよ」

その日は普通に家に帰って、ニュースを見て、アニメも見て。夕食も普段通りに食べて、高校のテストに備えて勉強してた。一息着こうと、暖かいコーヒー牛乳を作ろうとして牛乳を電子レンジで温めてたら、母がちょっといいかしらと言うのでなあに?とダイニングテーブルに座ればあのね、という言葉から始まって。衝撃の事実を聞かされた。

「・・・・・・・・悪魔に、取り付かれやすい、」
「そう。それが近くにないと貴方は悪魔が見えるのよ」

・・・・・しら、ない。そんな事。

「・・・・・・、・・・」

私は、昔一回だけ何かに取り付かれてお祓いをしてもらった記憶がある。そう、あれはたしか幼稚園の頃だった気がする。その時、神父様に渡されたのが、青いけど光に照らせば緑にも見える石だった。
それを私はストラップにして、今も尚いつも持ち歩いている。今では習慣になっているが、習慣になる程、当時私はよっぽど怖かったのだろう。今は記憶はもう殆どないけれども。

「それでね、ママが正十字学園を勧めたのはね、その事が関係してるの」
「・・・・・・聞かせて」
「あのね、正十字学園ではある塾があって、その塾は悪魔と対抗する為に学ぶ学校なの」
「・・・・・・・え、ええ?」
「いきなりで、びっくりしてると思うけど・・・・貴方を昔助けてくれた藤本さんって言う神父さんがね、教えてくれたの」

私は行きたい高校はなかったし、将来の夢は安定した職に就きたいな程度なので高校は母が勧めてきた正十字学園にした。だけど、まさかそれが、そんな深い意味があったなんて知らなかった。・・・・知らないこと、だらけだ。そうか、正十字学園が、・・・・気がつかなかった。気付かぬ内に私は例の漫画の舞台である高校に入学していたのか。

「菖蒲ちゃんはいつか・・・・またもしかしたら、もっと大きな悪魔に気に入られちゃうかもしれないから、もっと悪魔を学んだ方いいって。・・・・逃げてるだけじゃ、駄目だって。」
「・・・・・お母さん?」
「ごめんね・・・・ママ、言えなかったの。もし、言ったら貴方の夢や未来を壊してしまうんじゃないかって。」
「・・・・・」
「でもね、やっぱりママは、貴方を失うのが、一番怖いの。それに、貴方自信がいなくなったら、貴方がこれから見る夢も未来も壊れる所かなくなってしまう。・・・・だから、お願い。ママの一生のお願いよ、」

塾に、入って。
お母さんの、顔はよく見えなかった。母親に、頭を下げられたのは初めての事で、すごく、なんだか、申し訳ない気持ちと、どこか他人事のように思えた。
まるで、自分の事じゃないようで。でも、仕方ないと思う。だって、私には知らないことが沢山実はあって、それをすぐにハイそうですかなんて飲み込める程私は図太くはないのだから。

「・・・・・・・、・・・・・」

でも、これだけは言える。
私は、自分の未来の為に、今から逃げてはいけない。そう、たとえ藤本神父だとか、悪魔だとか、生前、私がいた世界とは掛け離れていても。違っても、紙の上の出来事だとしても、私は今此処にいる。今度こそは、早死にしたくない。自分の事は自分で守らなくては。


「・・・・・・・わかった」

そう言って冷めた牛乳を私はもう一度温め直した。
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